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2020.09.11

これからの経営者にはどんな視点が必要か。VCが語る「社会に望まれるサービス」のあり方

d3sign/Getty Images


上場は「滝を昇っていくようなもの」


元榮:2012年7月にサインをして、投資実行は8月1日。それを機に石丸さんに弁護士ドットコムの社外取締役にもなっていただき、そこから同じ経営陣として、共に歩みを始めることになりました。

当時の弁護士ドットコムにはマネージャーがいなくて、取締役が3人いましたが、私が代表取締役で、あとの2人は私の父親と母親という組織でした。石丸さんは、家族の食卓に招かれたお客さんみたいな状態でしたね。

当時の社員たちは、牧歌的でのんびりとした雰囲気でした。社内に「なぜ上場しなければならないのか」という考えの人間もいて、会社としての意思統一も図られていない状態でした。

石丸:スタートしてすでに7年ほどが経過していた弁護士ドットコムは、スタートアップとしてはそれなりの歴史もあり、古参の社員も定着していました。それはそれで会社のひとつのあり方ではありますが、上場を目指すとなると、それだけでは難しい。

上場するというのは、たとえるならば物理法則に逆らって滝を昇っていくようなものなので、多少厳しくやっていかないといけない。当時、そういったことを考えていました。

元榮:私としても助かりました。代表である私が強く、厳しくやりすぎてしまうと、言われた社員は心が折れてしまいます。そこに、「大人」である石丸さんが、私の斜め上くらいからの立ち位置から、社員に厳しく言ってくれるのは、本当に助かりました。

「このままでは、ここにいる社員で1年後に残っている人間は誰もいない」と、社員に向かって愛情を持って厳しく話をしてくれたのを覚えています。

石丸:辞める辞めないというのはどうでもよくて、経営幹部として経営会議の場で話すような立場の人は、だんだん絞られてきます。そういったメンバーの気持ちを引き締めることで、社内全体の雰囲気を変えていく必要性を当時感じていました。

元榮:弁護士ドットコムが上場したのは2014年の12月でした。石丸さんに入っていただいてから2年4カ月という短い期間で駆け抜けていったのですが、その間はやはり緊張感がありましたね。

まずは上場を目指すにあたって、新しい取締役を探す必要に迫られました。後に取締役COOを引き受けてくれる水木孝幸も、石丸さんのご縁でつながりました。

石丸:彼はモバイル関連のビジネス展開が得意で、カカクコムやデジタルガレージでもその力を発揮していました。弁護士ドットコムの会員課金をテコ入れしてほしいと引き込んだら、後日彼に呼ばれて「石丸さん、弁護士ドットコムに転籍したいです」と言われました。

私としてはそうなることを想定したやり取りではなかったのですが、本人の意志だし、最終的に関係者がみんなハッピーになったので良かったですね。

元榮:もうひとり、取締役CFOとして上場後まで支えてくれた、杉山慎一郎は、大学時代の友人が紹介してくれました。杉山さんも水木さんも2013年7月に正式入社し、上場に向けた準備が少しずつ整っていきました。
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文=元榮太一郎

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