現在は独立してアコードベンチャーズというベンチャーキャピタルを立ち上げ、ベンチャーキャピタリストとして数多くの企業を上場へと導いている石丸氏。コロナ禍によってますます混迷を深めるこの時代に、起業家・経営者にはどのようなマインドや視点が必要となってくるのか。現在も最前線を走り続ける石丸氏に聞いた。
元榮太一郎(以下、元榮):石丸さんがベンチャーキャピタリストとして投資してきた企業には、そうそうたる名前が並んでいます。これまで手がかけた企業はどんなところがありますか?
石丸文彦(以下、石丸):クラウドワークス、アイリッジ(O2Oアプリのプラットフォーム企業)、オークファン(商品取引情報サイト運営企業)、グッドパッチ(UI/UXデザイン支援企業)、あとは、いまはラクマになったフリルなど、そして元榮さんの弁護士ドットコムですね。
元榮:弁護士ドットコムが投資を受けたのは2012年8月でした。同じ年の4月に、弁護士ドットコムニュース(当時は「弁護士ドットコムトピックス」)を立ち上げて、何本かヒットも生まれて、ようやく月間サイト訪問者数100万人が見えてきた頃です。さあ、大きく打って出ようというタイミングで、石丸さんから声がかかりました。
石丸:タイミングが良かったのですね。
元榮:僕たちはずっと「専門家版のカカクコムつくりたい」とベンチマークしていました。デジタルガレージはその会社の筆頭株主であり、カカクコムを育てた会社ですから、うれしかったですよ。石丸さんとはそれ以前からお付き合いがあって、信頼関係もありましたから、これはなにかの運命なんじゃないかと思いました。
石丸さんがデジタルガレージの社内で調整や説得に全力を尽くしてくださっていたという話は、当時も他の関係者から聞いていました。その結果バリュエーションでプレ14億円という、当時では思い切った金額で弁護士ドットコムを評価していただきました。
石丸:当時、弁護士ドットコムの月間売上が1000万円に届いたかどうかという時期でした。プレで14億円というのは、高くもなく、安くもなくという感じでしたね。
元榮:2012年当時は、1億円でも「億単位の資金調達」とニュースになっていた時代でした。こちらからすると、創業者が初めて外部資本を入れるというのは相当な勇気がいるわけです。いろいろなVCから声がかかりましたが、投資を受けるにしても「もうちょっと!」と葛藤してしまうところがありました。
弁護士ドットコムへの投資を決める際、投資担当者として当時はどのようなことを考えていたんですか?