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ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信


わずかな時間で作業をするため、拭き残しは目立つし、かえって汚くなっている状態も散見されるが、それでもチップを渡す運転手は後を絶たない。

しかし、この押しかけのサービスに「ノー」と言った人に対して、商機を失っていらだったスクイージーキッズたちが棒で窓を叩くなどの行為に出ることがあり、トラブルの元になっている。

実際に、窓を叩かれたり、車を傷つけられたりしたとして、ドア開けて飛び出してきた運転手とスクイージーキッズが殴り合いの喧嘩になっている動画が拡散している。年間で3000を超える苦情も市には寄せられており、ボルチモアの当局は何故その行為を根絶できないのかと、全米が注視するに至っている。

ワシントンD.C.に近いボルチモアは、アフリカ系アメリカ人社会が白人社会に対して歴史的に根強い反感を持っている都市の1つだ。数年前の白人警官のアフリカ系アメリカ人の歩行者に対する不当な職務質問と射殺事件で大暴動が起き、市長が非常事態宣言を出して、夜間に外出令が敷かれたのも記憶に新しい。

ボルチモアでは、過去にスクイージー行為を明確に禁じる法律をつくろうとして、アフリカ系アメリカ人の市会議員によって猛反対された過去を持っている。つまり、アフリカ系アメリカ人ばかりがやっているスクイージーの仕事の機会を規制するのは、白人社会からの嫌がらせだという解釈が市民のなかにあったからだ。

警官は現場にいても見て見ぬふり


現在では、スクイージーはボルチモアでも完全に違法行為となったが、ボルチモア・サン紙によれば、スクイージーキッズの行動を制止する警察官は見当たらないという。多くの警官は現場にいても見て見ぬふりで、もっと重い犯罪にプライオリティを置いているし、口頭注意することがあっても、パトカーが去ると、またスクイージーキッズはその交差点に戻ってくるという。

アグレッシブにドライバーと口論をするような少年はほんの一部で、多くの少年たちは、自分や家族のパンを買うためにスクイージーをしているという実態を市民が理解している。なので、これだけ社会問題になってもボルティモア市民はたとえ自分のクルマの窓が汚くなってもあえて窓を拭かせ、数ドルを渡している。そして、その金を渡すから、スクイージーはなくならないのだ。

スクイージーキッズたちは、麻薬の密売の手下となったり、特殊詐欺の使いっ走りにでもなったりすれば、もっと多くの金が稼げることがわかっている。とはいえ、犯罪行為には関わりたくないという意識が彼らにはあるというところで、かろうじて一般市民とつながっている。

AP通信の取材でも、実際にスクイージーキッズの1日約1万円程度の稼ぎが、親兄弟を支えている主要収入であるケースもある。理由はさまざまでも、学校に行かずに働いている。働けない親が、子供のスクイージーを交差点の隅から見守っているというケースさえある。

文=長野慶太

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