#供述弱者を知る

連載「#供述弱者を知る」

小学校時代、西山美香さん(40)は生まれながらの障害に起因する〝誤学習〟を重ねたのではないか。そう指摘する専門家の声は「好きになったから(うその)自白をした」という虚偽自白の経緯を解明する手がかりになった。

西山さんは、両親への手紙で「私は人に話をしてごかい(誤解)をさしてしまうことがあって不安です」「私は人との接し方がわからない」「自分の気持ちを相手に落ち着いて伝えることが苦手です」と書いていた。

相手の意図をうまく受け取ることができず、また、自分の思いもうまく伝えられない。そんなもどかしさをずっと抱えてきた。大なり小なり誰にでもあることだが、西山さんは〝誤学習〟によって、人との擦れ違いがさらに深みにはまるパターンを繰り返してきた。それが発達障害に詳しい専門家の見方だった。

前回の記事:ヒーローだった高校時代 冤罪は「生きづらさ」見知らぬ社会で起きた

再び、出所後に西山さんが話してくれた内容と重ね合わせながら、読み解いていきたい。

小学校の時に友だちづくりに失敗した西山さんは、友だちができない悩みを抱えたまま中学に進んだ。西山さんと両親にとっての、つらい3年間の始まりだった。

入学すると、卓球部に入ったが、部活の友だちとは仲良くなったが「だんだん仲良くできなくなっていったんですよ」と振り返る。

小学校の時は、友だちと待ち合わせていながら別の友だちが来ると、約束を忘れて(あるいは、待っていられずに)その場を離れてしまう、といったことの繰り返しで友だちができなかった。中学の時の理由は「うそをつくようになった」ことだと西山さんは言う。

2人の兄と比べられるコンプレックスと苦悩


「自分を気にかけてもらいたくて、親のことを『本当の親じゃない』と言ったりしたから。お兄ちゃんと比べられるのがいやで、親が違うことにすれば比べられない、と思ったんです。でも、うそはバレるから、だんだん仲良くできなくなっていった」

うそをつくきっかけの一つが、優秀な2人の兄と比べられることだった。中学に入学すると同時に植え付けられた兄へのコンプレックスは、次第に深い傷になっていった。

「2番目のお兄ちゃんが3年生で卒業して、1年生で私が入ってくると、お兄ちゃんを教えた先生たちが新1年生の担任になりますよね。一番覚えているのは、勉強のことで『何でこんなにできないんや、お兄ちゃんみたいに』って言われたこと」

勉強が分からない苦しさ、優秀な兄と比べられるいらだち、友だちができない孤独感で、次第に自分を抑えることができなくなった。

「授業中に反発してうるさくしたし、教室を飛び出したし、職員室に行って先生の教え方が悪いんや、とも言った。だって、先生がお兄ちゃんと比べるんやもん。授業が中断するから、みんないらいらするでしょ。ますます友だちができなくなって、余計にいらいらして、きーってなる」

兄の話を持ち出されることは、耐え難いことだったが、親も教師もそのことに深くは気づかなかったようだ。

文=秦融

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