採用基準を見直す際のポイント
すでに明確な採用基準がある場合でも、必要な人材をより多く募集・獲得できるよう目指そう。例えば、次のような課題に悩んでいる企業は、選考基準を見直す必要があるかもしれない。これから紹介するいくつかのポイントを、採用基準の見直しの一助としていただきたい。
・応募数は多いが、必要としている人材が見つからない。
・採用まで至ったものの、離職率が高い。
・人事部が採用したいと思っていた候補者が、現場部門との面接で不採用になってしまう。
採用の目的は明確になっているか
まずは、なぜ採用を行っているのか、その目的を明確にしよう。後で詳しく紹介するが、採用基準を設計するステップとして「コンピテンシー」や「人物像」の定義をする際に、目的が明確になっている必要がある。「欠員を補填するため」なら、前任者のポジションをカバーできるスキルや能力が備わっている人、「新規事業に力を入れるため」なら、プロジェクトの立ち上げ経験がある人など、目的が明確であれば具体的に求める経験・実績なども見えやすい。
当たり前に思えることだが、なぜ目的が大切かというと、自社に上手く溶け込んでもらえそうなどの対人スキルにのみ焦点を当てて「良い人材」としてしまうと、その人が持っているスキルと現場のニーズがマッチせず、せっかく雇用してもミスマッチになりかねないからだ。
また、能力的に優秀で採用したい人材がいた場合でも、目的にフィットしていなければうまくいかないこともある。例えば候補者のスキルや能力が、採用予定の部署や業務に対してオーバースペックになっているケースが該当する。
関係者に共通認識があるか
採用の選考フローに関わる面接担当者が、全員同じ目線で採用にあたれるよう、採用基準のコンセンサスがあることも重要なポイントだ。特に採用率が極端に低いもしくは高い場合で、人材不足による現場の疲弊や離職率増加が課題になっていたら、原因はここにあるかもしれない。採用基準の認識がズレていると、採用担当者によって観点やそれぞれの項目の評価比重がばらけてしまう。その結果、求める人材の定義が揺らぎ、当初描いたような人材が採用できないことや、想定していない人材を採用してしまうこともありうる。
こうした問題を避けるためには、採用基準に「明確に沿うべきところ」と「そうではないところ」を、採用にかかわる社員が理解できるよう、採用担当者が整理する必要がある。
例えばコミュニケーションスキルを重視する場合、「相手の目を見てはっきりと受け答えができている」「知らないことは知らないと素直に言うことができる」など、例示ができたり具体的に示せる採用基準を設けておくことが重要である。
一方で、全ての要素を厳格に基準化してしまうと人材の多様性がなくなるおそれもあるので、繰り返しになるが「共通事項」「各担当者の判断にゆだねる事項」といった区分ができていると理想的だ。
採用活動が人事ではなく各部署に委ねられている場合は、すべての部署で足並みを揃えるのが難しい。どのような採用基準で、どのような応募者が見送りとなったのかを、人事部が詳細に把握できるプロセスを設計して、細かな情報集約を心がけよう。
なお、やみくもに内定を出すことはNGだが、かといって人材を選り好みしすぎていても、理想的な人材がすぐに採用できるとは限らない。ニーズと100%合致していなくとも、多少の教育やコミュニケーションを経ることで活躍が見込まれるのであれば採用するなど、採用基準にはある程度の柔軟性があると人材不足に悩まされずにすむかもしれない。