採用基準の設計と運用|選考の質を高め、社員の定着率を向上させる

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採用基準をつくる4つの手順


次に、自社の採用基準を決めていく具体的な方法について見ていこう。自社の採用基準が曖昧、もしくは採用基準そのものがない場合は、下記で解説するステップを踏むことから始めて欲しい。


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手順1. 社内ヒアリング

最初に行うべきは、自社の採用ニーズを把握することだ。人事もしくは各部署の採用担当者が、現場でどういった人材を要望しているのかヒアリングし、リスト化しよう。

手順2. コンピテンシー項目の作成

次に、聞き取った理想的人材のコンピテンシーを項目化する。

コンピテンシーとは、「高いパフォーマンスを発揮できる行動特性や考え方」のこと。どう考えてどのように行動すれば、応募しているポジションで業績をあげられるのかを、具体化させた指標とも言える。

営業職の採用を例に考えてみよう。

前職で営業として経験のある候補者が「毎日電話をかけて、クライアントを追っていた」と積極性を露わにしたとしよう。しかしその理由が「毎日30件の電話アポイントメントがノルマだったため」と受け身の行動であった場合は、その行動に至るまでの主体的・戦略的な思考があったとはいえない。

一方で、同じ毎日30件のアウトバウンド営業をしていた候補者がいたとする。しかしその理由が前者と異なり「四半期の売上目標額〇〇円に対して10件の受注が必要だった。そのためには40回の商談が必要だと逆算し、そのアポイントを取るために毎日数を決めて電話をしていた」といった背景があったらどうだろうか。

候補者がこうした経験を語れる場合は、積極性・計画性・主体性などの点では営業職のコンピテンシーがありそうだと判断できる。

つまり、採用する人材に応募職種そのものの経験がなくても、その人の過去の思考や行動どういった考えで過去の行動に至ったのか)が定義したコンピテンシーにマッチすれば、適性はあると見込めるわけである。

このようなコンピテンシーが垣間見れる話題をうまく候補者から引き出すのも、面接官にとって欠かせないスキルだろう。

コンピテンシーは、同じ部署でもマネージャー・メンバーといった職階によって異なるため、募集ポジションごとに定義することが重要だ。


手順3. 採用したい人材像の明確化

コンピテンシーを決めたら、採用基準として具体的な行動に落とし込もう。先ほどの営業職の採用を例にすると、以下のように展開できる。

これらをどこまで詳細に定義するかは、企業の採用目的や求める業種によってさまざまだ。上で述べたように、抽象的すぎず、かつ厳格すぎないバランスを見ることで、会社として運用しやすい採用基準になる。

手順4. 採用基準の明文化

最後に、リスト化したコンピテンシーを、採用フロー毎にどのようにチェックするかを決めていく。

例えば上の表のようにまとめて文書化して配布することや、人事部署以外の社員が面接官をする前に口頭でオリエンテーションをするなど、自社の事情に合わせて運用すると良いだろう。


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文=小野祐紀

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