ビジネス

2020.08.07

そのズレが問題だ。「問いのデザイン」があぶり出す、議論における勘違い

『問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション』安斎勇樹・塩瀬隆之 著


コロナ禍で見直される「問い」とは?


コロナ禍において、組織課題に関するファシリテーションの依頼が増えていると安斎は言う。

「リモートワークが進み、個人モードになる人が増えると同時に、価値観の多様性が高まっています。そのため、一体感がなくなり、社員それぞれが組織を主語に語ることが難しくなっているんです。組織がバラバラになりやすい今だからこそ、ビジョンの見直しや事業のあり方を探るファシリテーションの依頼が増えています。

個人の価値観が尊重される状態を、否定しているわけではありません。ただ、目線が個人モードに下がったままでは、お互いにわかり合えない場面が増えてしまう。そんなときに、コロナ禍を経て、会社が生み出すべき価値についても問い直さなくちゃいけない。これまで生み出してきた価値、解決しようとしてきた課題が大きく変わる今、ビジョンやアイデンティティの再定義が求められているんです」


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そんな安斎自身も、ミミクリデザインを立ち上げて3年。4期目である2020年3月には、デザインファームであるDONGURIと資本業務提携を発表している。

「もともと、僕は東京大学工学部卒業後、東京大学大学院で人間の学習と創造性について研究していました。アカデミック畑だったんです。でも、学問と経営は大きく切り離されています。そこで、研究の知見をもっと現場の課題解決に活かすべく、2017年にミミクリデザイン設立。おかげさまで会社の仕事も増え、理念に共感してくれたメンバーも増えました。

ちょうど2期目を迎えるころに『このタイミングで組織構造をちゃんとしておいたほうがいい』と考え、DONGURIに入ってもらったんです。いざ一緒にやってみてお互いの組織風土と事業領域の相性の良さを実感し、業務提携に至りました」

ミミクリデザインとDONGURIの資本提携、『問いのデザイン』の出版。今の状況を、安斎は「会社を成長させていった結果、大学よりも理想的な研究環境が手に入った」と笑う。

「ミミクリデザインとDONGURIのミッションは、組織イノベーションに関する知のアップデートです。共同経営者のミナベトモミが盤石な経営管理を推進してくれるから、僕は研究に専念し、知を研ぎ澄まし、組織の創造性を耕す役割分担になっているんです。僕としては、海外のソリューションを輸入するだけでなく、自分たちで知を磨き込み、『問いのデザイン』をはじめとするイノベーションの方法論のアップデートを続けていきたい。そのための研究と経営を両立させるスタイルを、これからさらに模索していきます」

文=福岡夏樹 写真=小田駿一

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