この講義では、メンバーのやる気を起こさせ、本質的な課題解決に挑むためには「Why」を起点に考えるべきだと説いている。しかし、具体的にどうすれば「Whyから始める」ことができるのだろうか。その大きなヒントとなるのが、6月に発売された書籍『問いのデザイン』だ。著者は、ミミクリデザインCEOの安斎勇樹。
「問いのデザイン」とは、さまざまなメンバーが集まって議論する場において、問題の本質を見抜き、正しく課題設定するための思考を指す。書籍は現在3万部を突破していることから、ビジネスの現場において、この思考が求められているとわかる。
そもそも、議論の場で「問い」にフォーカスすべき理由は何か。そのためのデザインとはどういった行動や考え方を指しているのだろうか。安斎が「問いのデザイン」という言葉に辿り着くまでを追った。
ミミクリデザインCEOの安斎勇樹
「問いのデザイン」が明確にする3つのこと
安斎が代表を務めるミミクリデザインでは、組織や事業にある課題を明確にし、解決策を話し合うための場作り=ワークショップ、ファシリテーションを行う。これには、社内で話し合うだけでは八方塞がりになるところを、第三者の目線から意見を入れつつ、議論を前へ進める狙いがある。
「弊社に寄せられる依頼の多くが、『閉塞感を打破するためのアイデアを出したい』です。例えば、製薬会社など、長く同じ製品をつくっているところなどは、いきなり『新しいことをやれ』と言われても、既存概念が固まっていたりしてすぐにアイデアを出すのは難しい。そこで第三者の立場を活用し、染み付いた固定概念を払いながら議論を進めているのです」
そのなかで、安斎が常にフォーカスを当ててきたのが「問い」。というのも、どの企業でも肝心の「問い」がズレていることが多く、なかなか議論が進まないのだという。
「クライアントの一人である自動車メーカーから、『AIに対抗するカーナビのアイデアを出すために協力してほしい』と連絡を受けました。そこで、改めて『なぜカーナビをつくってきたのか?』と問いかけたところ、彼らはカーナビをつくりたいわけじゃなくて、快適な移動時間を支援したい想いがあるとわかったのです。そうすると、本人たちも『なるほど、やりたかったことはこれだ』となり、AIやカーナビに縛られないアイデアが出てきました。
当然ですが、チームや組織内で共有する『問い』がズレていると、いいアウトプットは出ません。しかし、多くの企業では『問い』の設定がしっかりできていないのです」