米国では今後、「988」を自殺とメンタルヘルスの危機に対応するカウンセラーに直接つながる電話番号とする。すべての通信事業者とVOIP(ボイスオーバーインターネットプロトコル)サービスプロバイダーには、新たな規則に従い、988にかけられた電話を全米自殺防止ライフラインに転送することが求められる。
FCCのアジット・パイ委員長はこの決定に先立ち、次のように述べていた。
「危機にあるときに助けを求めることは、決して恥ずべきことではないという力強いメッセージを発信したいと考えています。助けを求めるのは弱さではなく、強さを表わすものです」
なお、「988」の使用が開始された後も、これまでの10桁の番号は利用が可能。また、退役軍人やLGBTQのコミュニティー向けに設置されている10桁の番号も、引き続き利用することができる。
パンデミックで状況が深刻化
新型コロナウイルスのパンデミックなど、今年に入って発生した新たな危機がある一方で、米国ではそれ以前から、自殺の問題は危機的な状況にあった。全米自殺防止財団によると、2018年に自殺した人は、前年より多い4万8000人以上。およそ11分に1人が自殺していたことになる。また、同年の自殺未遂者は140万人を超えていた。
自殺は米国人の死亡原因の第10位だ。米疾病対策センター(CDC)によれば、10~34歳に限ってみた場合には2位となる。これは、自殺が米国の公衆衛生上の問題であることを証明するものといえる。
現在ある全米自殺防止ライフライン(1-800-273-8255)は、国内170カ所でカウンセラーが電話相談に応じており、このネットワークに寄せられる電話の件数は、年間数百万件にのぼっている。
さらに、国内では新型コロナウイルスのパンデミックの直接的な影響として、電話の件数がさらに増加している。その他の支援団体によれば、パンデミックの発生以来、相談件数は一部で2倍に増えているという。パンデミックと経済、個人が直面する危機の影響が公衆衛生にどのような状況をもたらすかについて、メンタルヘルスの専門家たちはその一端を理解し始めたばかりだろう。
米国の自殺者数は1999年から2018年までに35%増加しており、メンタルヘルスに関するリソースがすでに以前から不足していたことは、データからみても明らかだ。
全米で利用可能になるこの新たなホットラインの重要性を軽視することはできない。いまこそ自殺防止のための取り組みを強化するべきときだ。3桁の覚えやすい番号を割り当てることで、メンタルヘルスを巡る問題への偏見をなくすことや、この問題に対する支援の重要性への理解が深まることが期待されている。