都会の真ん中で休む(星のや東京)
移動による疲れを最小限に留めつつ、日常から最大限離れて整えたい、という方におすすめなのが、大手町駅から徒歩圏内の日本旅館「星のや東京」だ。
「旅館のおもてなし」は一歩足を踏み入れた瞬間から始まっている。日本の職人技が生きた美しいインテリア、靴を預けて素足に感じるいぐさの感触や、お茶の間をイメージしたラウンジ。
最上階にある露天風呂は地下1500メートルから湧き上がる天然温泉という「旅館」の魅力にホッと心が緩み、忘れかけていた「日本らしさ」の整え力に改めて気づくはずだ。
そしてこの夏から、食にも新しいコンセプトがもたらされている。ボキューズ・ドール日本代表として、魚料理で世界一となった浜田統之シェフが生み出す「Nipponキュイジーヌ」が、免疫力を高めるとも言われる「発酵」によりフォーカスしたメニューをスタート。
「Nipponキュイジーヌ」で提供される「五つの意思」
長年に渡る浜田シェフのネットワークで、日本中の発酵のプロから集めた、雲丹醤や酒粕、酒盗、うるか、大徳寺納豆など、すべての料理に多様な発酵食材を使い、体の内側から整えるというわけだ。
また、本来は肉をメインには使わないが、現在はコロナで余剰となってしまった上質なマガモを使った料理も提供されている。日本では自宅で漬物を漬けるなど、食生活の中に身近にあった発酵も、いつの間にかそんな文化も失われつつあることに気づかされる。
地域独自の風土や環境によって成り立つ発酵の多様性を、浜田シェフの感性とフレンチの技法で表現した料理は、「Nipponキュイジーヌ」に新たなテーマを加えたと言えるだろう。
料理には、思わずクスッと笑ってしまうような遊び心も添えられていて、「こんな時期だからこそ楽しく、美味しく食べて健康に」という浜田シェフの想いが込められている。
ロビーには、中止が相次ぐ夏祭りの華やいだ気分を味わって欲しいと、8月31日まで、縁日を思い出す、(切り絵の一種である)紋切りやお面作り、東京の地酒の飲み比べなどができるコーナーが設置されている。
帰省せずとも、まるで故郷に帰ったような、どこか懐かしい香りのする日本の夏に癒されるはずだ。