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2020.08.10

都市インフラを変えるスタートアップ「Irys」を生んだ20代起業家

Sergii Petruk / EyeEm / GettyImages

都市インフラの整備やメンテナンスに役立つシステムを開発するスタートアップ企業「Irys」が7月22日、シードラウンドで120万ドル(約1億2600万円)を調達したと発表した。今回の調達を主導したのはGood Growth Capitalで、ArcadisやTechstars Ventures、City Rise Venturesも参加した。

Irysは都市の住民がスマホのアプリを用いて、信号の故障や道路の陥没などを、地域の行政に報告するためのシステムを開発している。Irysのシステムは、スマホで撮影された写真に自動的に位置データを添え、行政の窓口に送信する。

データはAI(人工知能)で処理された後に、適切な部門に振り分けられる。例えば、陥没した道路の写真は道路メンテナンス部門に送られ、破損した水道管の写真は水道局に送られる。また、迷い犬や迷いネコの写真は動物保護を担当する部署に送られる。

「当社のテクノロジーはコミュニケーションの溝を埋めていくものだ」と、IrysのCEOを務めるBeto Altamiranoは話す。彼は2018年のフォーブスの30アンダー30の社会起業家部門に選出されていた。

世界の都市インフラは様々な問題を抱えており、対処せねばならない課題は今後も増えていく。国連の統計によると現在は世界人口の55%が都市で暮らしているが、この数字は2050年には68%に上昇する。

Irysのシステムは主に、小規模から中規模の都市を顧客に想定しており、人口に応じて利用料金が変動する。人口が3万人までの中規模都市の場合、年間利用料は最大2万5000ドルとされている。また、50万人から700万人規模の大都市の場合は、年間9万5000ドルから15万ドルという価格設定だ。

Irysの創業チームはテキサス州サンアントニオの出身で、同社はサンアントニオ市を含む15都市と契約を結んでいる。サンアントニオ市長のRon Nirenbergは、同社のテクノロジーが既に都市の一部となっていると述べた。Irysは最近、地元の米軍基地とも契約を締結した。

同社を立ち上げたAltamiranoはメキシコからの移民の両親の下に生まれ、サウステキサスで育った。彼が公共サービスに関心を持ったきっかけは、18歳の時に父がメキシコに強制送還されたことだったという。

オンラインのつながりで行政を変える


「それは心のトラウマになるような過酷な経験だった。その後、人々の暮らしに行政が果たす役割について考えるようになった」とAltamiranoは話す。

2013年にテキサス大学オースティン校を卒業したAltamiranoは、在学中に合衆国上院の外交委員会でインターンを務め、合衆国通商代表部に務めた経歴を持つ。彼はホワイトハウスでソーシャルメディアやデジタル関連の調査を進めるうちに、今後の社会を変える仕事をしたいと考え、起業を思い立ったという。

「その時思ったのは、我々は日常的にソーシャルメディアを通じて、お互いのエンゲージメントを高めているが、この仕組みを政治に活かしたらどうだろうというものだった。人々が行政とダイレクトにつながれるような仕組みを生み出したい。そんな思いからIrysの事業を立ち上げた」とAltamiranoは話した。

編集=上田裕資

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