ビヨンセは、このアルバム自体の製作に様々なアフリカ系のクリエイターを参画させると同時に、自身のウェブサイトに「ブラック・パレード」という特集を立ちあげ、黒人経営ブランドのリストを公開している。
アフリカや黒人の文化は、常に「権力」に搾取され続けてきた 歴史があり、昨今は大企業ブランドによる「文化盗用(Cultural Appropreation)」も課題だ。こうした文脈があるからこそ、白人やアジア人が手がける場合も少なくない「アフリカン・ファッション」ではなく、黒人・アフリカ人の視点や彼らのオーナーシップの有無という点に注目する必要がある。
黒人経営ブランドのリスト自体は以前から存在し、主に米国の黒人経営事業が紹介されていたが、この記事では、今回のアルバム発表にあたって新たに追加された“アフリカの黒人経営ブランド”に注目したい。
27カ国、147ブランドが掲載
アルバム『ブラック・イズ・キング』のファッションを手掛け、「ブラック・パレード」特集のキュレーションをした立役者は、ビヨンセのスタイリストとして活躍してきたゼリナ・エイカーズ(Zerina Akers)だ。2018年に南アフリカで開催された「グローバル・シチズン・フェスティバル」のライブなどでビヨンセのスタイリングを担当し、積極的にアフリカ系デザイナーを起用してきた。
「グローバル・シチズン・フェスティバル」のステージ(Getty Images)
アフリカ人デザイナーが手がける多くのブランドにとって、「ビヨンセ」というグローバル・プラットフォームは比類なきプロモーション機会だ。ビヨンセ自身が着用するのはほんの一握りのブランドだが、このリストに紹介されるだけでも大きなインパクトがある。
米国の事業も含むリスト全体では、美容系、飲食、インテリアなど多業種のブランドが紹介されているが、今回追加された27カ国(欧州とオーストラリア、カナダの5カ国含む)・147のブランドは、そのうち136がファッションであり、ほぼ「アフリカン・ファッション」のリストだと言える。
国ベースでいうと、約半分が南アフリカとナイジェリアのブランドだ。上位12カ国の内訳を見ると、南アフリカ(37)、ナイジェリア(30)、セネガル(13)、ケニア(9)、ガーナ(8)、コートジボアール(8)、英国(8)、フランス(5)、ルワンダ(4)、ナミビア(3)、タンザニア(3)、ウガンダ(3)と並ぶ。