4カ月で30万部。池上彰監修の「児童書」が売れまくる理由

池上彰監修『なぜ僕らは働くのか』


■子どもたちの将来のために“働く”をちゃんと教えたい。


“働く”というテーマは重厚で、子どもたちに伝えるのは難しい。こういった難しいテーマの書籍をなぜ作ろうと思ったのか、編集担当の宮崎純に聞いた。

「2000年代の初頭からキャリア教育の重要性が学校現場で叫ばれていますが、子どもたちが知っている職業の中から将来就きたい職業を選ばせたり、職業図鑑の中から興味のある仕事を調べたりするだけでは、キャリア教育とは言えないのではないかと思っていました。子どもたちの将来のために“働く”“生きる”の大事なことをしっかり教えられる本を作りたいと思っていました。」

では、宮崎氏の考えるキャリア教育とは何か。

「まずは子どもたちに“世の中のしくみ”をわかりやすく教えることがキャリア教育のいちばん大事なことだと思うんです。ちょっと見方を変えれば、子どもたちの目に見える範囲にも仕事はいろいろ隠れている。お金の動きにも目を向ける必要があるでしょう。お金のやり取りがあるということは、そこに仕事があるということです。そうした世の中の見方を教えたうえで、子どもたちが自分の人生に向き合う覚悟を持てるように、優しく諭すことを心掛けました。そうして作った本書が学校の先生から『子どもたちの指導にすごく役立ちます。こういう本が必要でした。』と言ってもらえているのは嬉しいです。」

■ヒットの秘密は「読者のために」を徹底した本づくり


さらに話を聞くと、そこには「読者のために」を徹底した本づくりの姿勢が浮かび上がった。本書は200名近くの小学生~高校生と、50名程度の教育関係者や保護者に製作途中の紙面を読んでもらい、意見をもらったという。これはとても手間がかかるため、出版業界ではなかなかない試みだ。宮崎氏は次のように語る。

「この本を読んでどう感じましたか? どの部分が印象に残りましたか? 気になった点や直してほしい点はありますか? ほかに触れてほしいテーマはありますか? など、いろいろなことを聞きました。製作側がいい本にできたと思っていても、子どもたちや子どもたちの成長を見守る大人たちが満足してくれるかどうかはわからない。だから実際にいろいろな人に紙面を郵送し、読んでもらって、意見をもらいました。編集部としては読んでもらう前に『これで完成だ』と思えるくらいのクオリティに仕上げていたのですが、気づきを与えてもらえて、内容の充実度や精度を上げることができました。ご協力いただいたみなさんのお名前は、本の巻末に記載しております。協力してくれた子どもたちも、本づくりという仕事の一部を体験できたことを喜んでくれているといいなと。」
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PR TIMESより

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