ポジティブ・ジャーナリズムの現場から

「#あちこちのすずさん」を展開するNHKディレクター 石丸響子さん

今年もまた8月がやってきた。

今回は、戦争と映画について、そして私の古巣のNHKによる新たな「戦争の記憶」の伝え方について書きたいと思う。

75年前のきょう、広島に原爆が投下された。コロナ禍の夏。いつもと違う「原爆の日」を迎えている。

去年の8月6日は、夏の甲子園が開幕したが、今年は中止。NHKは今年も広島市から平和記念式典を中継したが、そのあとに甲子園でプレーする球児たちの姿はテレビの中にない。本来なら今ごろは「平和の祭典」とも言われるオリンピック一色だったはずだが延期となっている。

感染拡大は「戦争の記憶」を伝える機会も奪っている。全国各地で慰霊祭や戦跡をめぐるツアーの中止が相次いでいる。戦争を直接体験した人はすでに90代を迎えている人が多く、高齢で感染リスクが高いとされることも影響している。

毎年、8月になると戦争や平和をテーマにした報道が増える。皮肉を込めて「8月ジャーナリズム」と呼ばれ、言葉の響きに気まずさを覚えるメディア関係者もいるだろう。これは「震災」や大きな事件・事故も同じで、いわば「アニバーサリー(記念日)報道」だ。たとえば「◯◯からきょうで◯年」の企画制作に向けて、花束を持ってご遺族宅に取材に向かうと「きょうはこのあと朝日新聞さんと読売新聞さんも来るんですよ」といった具合だ。

「8月ジャーナリズムだ」といった批判は理解できるが、「それでも伝えられないよりはよっぽどいい」と考える。批判の本質は報道のマンネリ化や、「そろそろ8月だけど今年のネタどうしよっか」という「やっつけ」的な取材に対するものだろう。

何よりこの記事もまた「8月ジャーナリズム」の1本である。

第4世代の誕生 戦争報道の課題は


いつか、8月でさえも、戦争や平和に関する報道がほとんどなくなってしまうのではないか。

戦後75年。みずからの体験として語ることができる人たちがどんどんこの世を去っていく。一方で、祖父母でさえ戦争を体験していない「第4世代」と呼ばれる若い人たちが誕生し、どうやって戦争の記憶や悲惨さを伝えていくのかが今までにまして大きな課題となっている。

「8月15日が何の日なのか、わからない」「日本とアメリカが戦争していたって本当?」

そんな若い人や子どもがいるとテレビで知った。

今年4月に82歳で亡くなった映画監督の大林宣彦さん。故郷の広島・尾道で撮影した「時をかける少女」などで知られる。映画を「風化しないジャーナリズム」と称したという。かつては軍国少年だった。遺作となった「海辺の映画館─キネマの玉手箱」では、「戦争の歴史は変えられないが、映画で未来は変えられる」といったセリフに平和への思いを込めた。

文=島 契嗣 写真=柴崎まどか

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