経済・社会

2020.08.06 17:00

75年目の原爆の日 #あちこちのすずさん がつなぐ「あの日の記憶」

「#あちこちのすずさん」を展開するNHKディレクター 石丸響子さん


岩手日報、徳島新聞、ヤフーニュース、スマートニュース、ツイッター ジャパンなど、中心となるNHKを入れて計12メディアが参加する大がかりな枠組みとなっている。
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たとえば、若い利用者が多いスマートニュースは、「#あちこちのすずさん」のハッシュタグがついた各紙の記事をまとめて表示することで、多くの人に見てもらえる。

#あちこちのすずさん
「#あちこちのすずさん」企画は、全国のメディアともコラボ展開した 提供:NHK

ツイッターなどに投稿されたエピソードもおもしろい。戦争中の話だが、ユーモアがあるものも少なくない。
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「空襲で焼けた実家に戻ったら、お釜に水を張って入れていたお米が炊けていた」

「ばあちゃんと婚約して軍需工場にきたじいちゃんが鉄くず盗んでばあちゃんに指輪作って持ち帰った」

「祖父が畑に防空壕を掘ろうとしたが、深さ1メートルで断念。以降、防空壕の話題はタブー化」

孫世代が祖父母から掘り起こしたエピソードがハッシュタグ「#あちこちのすずさん」とともにツイッターに投稿されている。身近な人の戦時中の暮らしのエピソードを通じて、戦争体験に触れてもらう狙いがある。

石丸さんは「戦争という重いテーマなのに、恋やおしゃれ、食べものなど『日常の暮らし』が多く登場するのが『この世界の片隅に』の魅力でもあるんです。こうした時代を超えた共通点が、戦時下のすずさんと今の若い人たちをつなぎ、戦争や平和を『自分ごと』としてとらえることにつながってほしいと思っています」と話す。

「コロナで、お祭りもなく浴衣も着られないし、せめてマスクでオシャレをしたいと思って。それで最近、浴衣をリメイクした可愛いマスクを買ったんですね。『ああ、すずさんもこうやって不自由な中でもおしゃれを楽しんだりしていたのかな』と思いました。こんな入り口やきっかけでいいんだと思うんです」

石丸さんの亡き祖父・正也さんも戦地に赴き、シベリア抑留を経験した。大勢の仲間が亡くなっていく過酷な状況の中で日々、材木伐採などの作業をしていた。ところが、実は抑留中も音楽や演劇を楽しんでいたことが、祖父が残した記録からわかり、石丸さんは驚いたという。「シベリアでどんな音楽を聴いていたのかな」と興味もわいた。

NHKはこれまで放送をメインに戦争の記憶を伝えてきた。しかし、現在はテレビをまったく見ないという若者も増えている。
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文=島 契嗣 写真=柴崎まどか

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