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ポジティブ・ジャーナリズムの現場から


戦時下の広島・呉が舞台のアニメ映画「この世界の片隅に」(片渕須直監督・脚本、こうの史代原作)は多くの若者の共感を呼んだ。異例のロングランや、数々の映画賞をさらったことでも話題になった。

後輩の宮崎駿監督らとスタジオジブリを設立した高畑勲監督がアニメ映画「火垂るの墓」(野坂昭如原作)を手がけたのが1988年。私自身、幼い頃からテレビで「火垂るの墓」を繰り返し観て育った。空襲の恐怖は幼心に焼き付いた。

「火垂るの墓」から30年近く。「この世界の片隅に」もまた、アニメ映画を通じた新たな戦争の伝え方に成功したと言っていい。物語は、広島市から海軍のまち、呉市に18歳で嫁ぐことになる主人公「すず」さんを中心に描かれる。空襲や原爆やのシーンもあり、すずさん自身も絶望に直面するが、最後には前を向いて生きる姿に、観る者は希望と救いを得る。SNSを中心に「クチコミ」が広がり、異例のロングランを支えた。

番組をつくらないディレクターが込めた思い


そして、映画に共感し、片渕監督への取材を重ね、キャンペーン「#あちこちのすずさん」を立ち上げたのがNHKだ。#あちこちのすずさん
NHKが始めたキャンペーン「#あちこちのすずさん」 若者からも反響が大きい

渋谷のNHK放送センターで出迎えてくれたのは制作局「新領域開発/media design」に所属する石丸響子ディレクター。「#あちこちのすずさん」のデジタル発信やメディア連携を担当している。NHKではディレクターのことを「PD」=Program(番組)Directorと呼ぶが、石丸さんは「私は番組をつくらないディレクターなんです」と笑う。

石丸さんは新卒で制作会社に入り、民放キー局の番組制作を経てNHK入局。NHKからヤフーに派遣された経験も持つ変わり種だ。ヤフーニュースではNHK出身の宮本聖二プロデューサーのもとで、全国の空襲体験を収集、アーカイブして配信するプロジェクト「未来に残す戦争の記憶」に携わった。その経験が、「#あちこちのすずさん」の取り組みにも生きているという。

NHKディレクター石丸響子さん
すずさんのパネルと石丸さんが迎えてくれた

「#あちこちのすずさん」キャンペーンの最大の特徴として、NHKの放送やデジタル発信だけでなく、全国の地方新聞各社やデジタルプラットフォームとの連携が挙げられる。

文=島 契嗣 写真=柴崎まどか

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