コロナ高死亡率の米国のヒスパニック系、研究が指摘するその要因

Photo by Erin Clark for The Boston Globe via Getty Images

米国のヒスパニック系では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染率と死亡率が過度に高くなっていることが最新研究で明らかになった。密集した生活環境や医療の不足、高リスクの職種といった既知の要因に加えて、大気汚染などの新たなファクターが影響していると見られる。

学術誌「Annals of Epidemiology」に7月23日付で発表された同研究によると、人口に占めるヒスパニック系の割合が特に高い(具体的には17.8%以上を占める)米国の郡を調査したところ、北東部のヒスパニック系住民は、白人に比べて新型コロナウイルスの感染率が過度に高かった。

その要因としては、パンデミック初期にホットスポットとなり、ウイルスが蔓延した同地域で、現場で働く「エッセンシャルワーカー」が多く、在宅勤務ができなかったことや、密集した居住環境、大気汚染が肺にダメージを及ぼすエリアに暮らしていることなどが挙げられている。

一方、新型コロナウイルス感染症による死亡率が過度に高かったのは、中西部のヒスパニック系住民が多い郡だ。これについては、世帯当たりの居住人数や大気汚染といった要因のほかに、もうひとつ「考えられる説明」として、米国の畜肉・家禽肉加工施設の多くが中西部に集中していることが指摘されている。今回の研究は、有色人種のコミュニティにおける新型コロナウイルスの感染・死亡率に寄与する環境要因を取り上げた数少ない研究のひとつだ。

ヒスパニック系が米国の全人口に占める割合は約18%だが、6月8日現在、米国で確認された新型コロナウイルス感染例のうち、感染者の人種・民族別データが明らかになっている事例の33%をヒスパニック系が占めている(ほとんどの場合は、これらのデータは不明となっている)。

研究の対象となった地域のうち、ヒスパニック系の比率が高い郡は、低い郡に比べて住民の平均年齢が若いほか、「健康保険の非加入率が高く、1世帯における部屋当たりの居住人数が多く(中略)、またスペイン語のみを話す、またはスペイン語と英語を併用する」住民の比率が高いと、研究は指摘している。

研究によると、北東部では、ヒスパニック系の比率が高い郡は全体のわずか11%であるにもかかわらず、北東部における死亡者数の66.1%をそれらの郡が占めている。また米西部では、ヒスパニック系の比率が高い郡は全体の33%で、それらが西部における死亡者数の73.7%を占めた。

中西部では、ヒスパニック系の比率が高い郡は全体の4%で、それらの郡が中西部の新型コロナウイルス感染症による死亡者数の22.6%を占めた。ここまでに挙げた3つの地域では最も低い比率だが、職業上のリスクや、スペイン語のみを話す人の割合など、他の要因も考慮した場合、中西部の結果は他の2地域よりも悪いと、研究著者でジョージ・ワシントン大学に所属するカルロス・E・ロドリゲス・ディアズ(Carlos E. Rodriguez-Diaz)は述べている。

パンデミックが米国で拡大し始めた当初は、有色人種における新型コロナウイルスへの感染率は低いとする見方も一部にあったが、その後、黒人とヒスパニック系の感染/死亡率は急増した。数十年前から続く医療へのアクセス不足の問題など、複数の要因が打撃となった形だ。

ニューヨーク・タイムズ紙はこの7月、米疾病予防管理センター(CDC)のデータを基に、米国のおよそ1000郡で確認された感染例64万件の詳細を分析したところ、米国ではヒスパニック系と黒人の感染率が白人の3倍に上り、また死亡率も白人の2倍近いことが明らかになったと報じている。

翻訳=高橋朋子/ガリレオ

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