日本政府関係者は中国の一連の行動について、「おそらく与那国島の日本漁船が過去、尖閣諸島に上陸を目指す政治家や運動家を乗船させた過去があるとして、中国側が問題視していたからではないか。彼らなりに尖閣諸島に上陸する可能性があると判断し、過激な行動に出たようだ」と説明する。公船が日本領海に入る前に半日間、停止していた状況については「きっと、中央軍事委員会など上部機関の指示を仰いでいたのだろう」と語った。
中国は、日本や国際社会から激しく反発されて、自分たちが積み上げてきた「既成事実」が壊れないよう、圧力を少しずつ慎重に高めていくつもりなのだろう。別の政府関係者は「中国にとって、利害関係国が多く、米軍の動きも活発な南シナ海への対応の方が喫緊の課題だ。尖閣諸島を含む東シナ海に対しては慎重にゆっくりと対応していくつもりなのだろう」と語る。
中国の海洋調査船が7月9日~18日まで、日本の領土だと認めていない東京都の沖ノ鳥島島沖の排他的経済水域(EEZ)内で調査活動を行った。
日本政府関係者によれば、中国の調査船がこの海域に出現して調査を行うのは、1年に2度ほどある。ただ、従来は2~3日で調査を終えていたのに対し、今回は10日間と異例の長期間にわたった。これも「既成事実の積み上げ」にあたる行為だろう。EEZ内での不法な活動を取り締まる国内法がない日本の弱点を突く行動という意味もある。
中国は次に、どのような行動に出てくるだろうか。政府関係者の1人は「尖閣付近で操業する日本や中国の漁船を日中両国で共同管理しようと言い出すのではないか」と語る。
わざと多数の中国漁船を派遣したうえで、取り締まりに四苦八苦する海上保安庁の巡視船に協力する形で、国際社会に対して日本と中国との間で領土問題が存在する事実をアピールするのではないかという予測だ。「尖閣諸島を巡る領土問題は存在しない」という日本政府の主張を突き崩す、第1歩につながる。中国海警局の公船が漁船を取り締まる行為は、尖閣諸島周辺で中国が施政権を行使しているというアピールにもなる。
別の元自衛隊幹部は中国のこうしたアプローチについて「このまま中国が脅威を高めていけば、いずれ尖閣諸島の領有を巡る低烈度の紛争(*通常戦争と平和状態の中間にあたる紛争状態のこと)が起きるかもしれない」と語り、次のような事態を憂慮した。