中国海警局は昨年ごろから5000トン級のヘリコプター搭載船を尖閣周辺に投入するようになった。中国が昔、同海域に投入していた公船は1000トンにも満たなかった。船艇の大型化が意味するものは何なのか。
小型船舶の時代、中国が尖閣周辺で活動する期間は数日間に過ぎなかった。同海域は荒れることが多く、小型船では、乗組員が長期間の乗船に耐えられなかった。食糧の補給にも問題があったとみられるが、船艇の大型化でこうした問題が解決された。
では、長期にわたって尖閣周辺に居座る行為は何を意味するのか。元自衛隊幹部は「これは、警察権を行使し、パトロールを行うという法執行機関の発想ではない。プレゼンスを示して制海権を握るという軍の動きそのものだ」と語る。
中国海警局の公船4隻は二手に分かれて、海上保安庁の巡視船の動きを攪乱したこともあった。同幹部は「これも軍の発想。陽動作戦だ」と説明する。実際、防衛白書によれば、中国海警局は2018年7月、国務院(中央政府)の指揮下を離れ、中央軍事委員会が指揮する武装警察の隷下に入った。軍と海警の連携強化が進んでいるわけだ。
一方、中国がむやみに強硬な道を突っ走っているかと言えば、そうとも限らない。
今年5月、中国海警局の公船が尖閣周辺の領海内で、与那国島の日本漁船を追いかけ回す事件が起きた。政府関係者によれば、中国は7月、尖閣周辺での日本漁船の操業を禁じるよう、外交ルートを使って日本側に求めてきたという。
ただ、日本漁船が尖閣周辺で操業するのは今年5月が初めてではない。中国海警局の公船も黙って見守っていたという。5月に海警局の公船が尖閣の日本領海内に入ったときは、半日ほど接続水域で停止した後で侵入したともいう。