仮想チームで戦う「ファンタシースポーツ」が日本に残された「蒼い海」の理由

アメリカやヨーロッパで成長してきた「Fantasy Sports」の可能性は (Shutterstock)

「ファンタシースポーツ」と聞いてピンとくるのは、ほぼスポーツビジネス関係者だろう。

日本では「ファンタジー」と濁音になることが多いが、ここでは慣れ親しんだ英語に沿い「ファンタシー」としたい。

「ファンタシースポーツ(以下FS)」はプレーヤーが実在する選手をピックアップし、自身の仮想チームを構成。ピックアップした選手がシーズンを通し、実際に活躍した数値、データを元に、ポイント化し、その順位を競うゲームだ。

戦後アメリカで誕生したFSの魅力


FSは第二次世界大戦後にアメリカで生まれたとされる。1950年代にNFL(アメリカン・フットボール)をベースに形つくられ、60年代には打点や防御率を元にした「ファンタシー・ベースボール」が誕生。自身のチームを作り出す手法が、ニューヨーク・ヤンキースの豪腕オーナーに例えられ「スタインブレナーになれるゲーム」と『ニューヨーク・タイムズ』紙に掲載されたのが1980年のこと。

日本では「パワプロ」「プロスピ」などのTV/オンラインゲームに、この思想が反映され人気となっているのはご存知の通り。カブスのダルビッシュ有投手のTwitterでは、野球よりもプロスピについてのつぶやきのほうが多い……とささやかれるほどだ。

こうした日本のゲームはプレーヤー同士が対戦するが、ファンタシーでは選手たちの実際の試合での活躍が、ゲーム・プレーヤーの成績に反映される。要はオールスターのファン投票で作り上げた架空のチームの活躍を見守ると考えれば理解しやすいだろう。

1990年代、ニューヨークに住んでいた私もMLBやNBAのプレシーズン・ガイドブックを購入し、各選手のスタッツを眺めては自身の架空チームを構成し、このFSに何度か参戦したことがある。当時は紙ベースのゲームだったので、郵送していた。95年あたりからインターネットの時代となり、オンラインでよりリアルに楽しめるゲームへと進化した。

ネット黎明期から積極的にFSに参入したのはESPNやCBSスポーツなどのメディア。仮想チームを構成するために、ゲームのプレーヤーは、実在するチーム、選手の情報収集に常にデジタル・メディアを活用、UUやPVの押し上げにひと役買っていたからだ。

振り返ってみればおおらかな時代だった。ゲームに参加すると言っても、その結果が出るまで1シーズンを通し、実際の試合結果を見守らなければならなかった。
次ページ > 東京五輪延期によるスポーツビジネスの停滞

文=松永裕司

ForbesBrandVoice

人気記事