仮想チームで戦う「ファンタシースポーツ」が日本に残された「蒼い海」の理由

アメリカやヨーロッパで成長してきた「Fantasy Sports」の可能性は (Shutterstock)


これを発展させたのは、FS専門企業。2000年代後半にはFanduel (ファンデュエル)、Draftkings(ドラフトキング)という2大企業が出現。結果が出るまで1シーズンかかっていたFSの中に、毎日、毎試合、勝者を決めるシステムを導入、若いファンを中心に広く受け入れられた。

これを特に「デイリー・ファンタシー・スポーツ(DFS)」と呼び、今ではアメリカ、カナダ国内では6000万人以上のユーザーがDFSを含むFSをプレイ、1兆円を超える市場に成長した。NBAはFanduelに出資するなど市場のテコ入れにも積極的だった。

ところが日本では、まだこの市場形成が進んでいない。95年には「ファンタジースポーツ・ジャパン社」が設立され、インターネットを通じたサービスを提供。2001年には「スポナビ」が同サービスを開始したが、極めて一部のファンを持つに留まっている。

日本ではこうしたスポーツを対象としたゲームは、1969年から巻き起こったプロ野球「黒い霧事件」の後遺症を引きずっているとされる。選手による八百長が発覚し、多くの選手が野球界を追放された。現在「スポーツくじのtoto」が唯一のゲームだが、これはプレーヤーの力量と無関係に単純な「くじ」。ゲーミフィケーションの要素を含む、FSの本格導入が期待される。

スポーツ庁が提唱する「15兆円産業」への成長


スポーツ庁がかねがね、2025年までに15兆円産業への成長を提唱しているスポーツビジネスながら、新型コロナウイルスの影響で、東京五輪の延期を含めその成長はむしろ減速、停滞している。ひと工夫凝らした新しいスポーツの観戦スタイルが求められる契機ともなっているだけに、スポーツ庁としてもこうした新しいビジネス領域を後押しして欲しいものだ。

2000年代初頭と異なり、時代はスマホ・オリエンテッド。また5Gやブロックチェーンの登場により、八百長などの抑制力は飛躍的に高まっている。さらにIR推進法の成立により、スポーツ・ベッティングの可能性さえ見える中、そのステップとなるFSを取り巻く環境は整っている。

そんな中、今シーズン、巨人が興味深い取り組みを行っている。「イニングキング」と名付けたゲームを展開。ルールは単純。巨人の主催試合において、どのイニングに得点やヒットが出るかを予想し、与えられたメダルを置くだけ。メダルを置いたイニングにヒットが生まれ、得点につながることで、それに応じさらにメダルを与えられる。これを月間で、年間で、どれだけメダルを獲得したか。全国のファンと競うゲームになっている。

こうした気軽なゲームが定着し、人気が高まれば、本格的なFSも結果的に盛り上がりを見せる可能性を含んでいる。また巨人という「球界の盟主」が前向きに取り組んでいる点も意義深い。
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文=松永裕司

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