車道の使い方を市民が決める。バルセロナの「スーパーブロック計画」とは

ポブレノウ地区の「スーパーブロック」(撮影=鷲尾和彦)


この地区のスーパーブロックの中には、木製のブランコや滑り台のある小さな公園や、市内の舗道のタイルにも描かれている「バルセロナの花」がペイントされた巨大な植木鉢や花壇が市民によってつくられ、路上に設置された卓球台で近隣のオフィスで働いている人たちが楽しんでいる姿が印象的だ。

また、ときには近隣住民によって音楽やアートイベントなども開催される。誰にとっても関わりがある場所になること。そんな「社会的空間」(ソーシャルスペース)を都市の中に広げることが、このスーパーブロック計画の目的である。

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「スーパーブロック」計画(c)Agència d’Ecologia Urbana de Barcelona 

都市は「エコシステム」。消費エネルギーもセンサーで計測


実はこの計画でも、スマートシティ政策として進められてきたテクノロジー活用が活かされている。

ひとつひとつのスーパーブロックは、それぞれ約400~500m四方の広さに、約6000人の市民が暮らし、約400の事業者が活動できる「ユニット」(単位)として捉えられており、そこで消費されるエネルギーや自然資源の量は街角に設置されているセンサーで計測されている。

また、このユニットの中ではどの程度市民や事業者が活動しているのかについても定期的に検証が行われている。

バルセロナは、都市をその場所に暮らす人々を主な構成要素とする「生態系」(エコシステム)として捉える「エコシステミック・アーバニズム」(Ecosystemic Urbanism)という独自の理論を持っており、「エネルギー消費を減らしながら、同時に多様な人々の活動(アクティビティ)を活発になされている」状況こそが「都市の持続可能性」を実現する鍵であると捉えている。

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「エコシステミック・アーバニズム(Ecosystemic Urbanism)」の評価指標 (c)Agència d’Ecologia Urbana de Barcelona 

そして、この理論に基づき、「コンパクトさと機能性」「複雑性」「効率性」「社会的包摂性」という4つの評価軸と、合計45のインジケーターから都市環境の状況を計測し、科学的なエビデンスに基づいて、都市の持続可能性をマネージメントする方法がとられているのだ。

科学的根拠に基づき都市の状況を明らかにすることで、「持続可能な社会発展(サステナビリティ)」という大きな理念を、現実化させていく。

バルセロナ市のスマートシティ政策と「市民中心の社会づくり」は、こうした科学的アプローチをベースに着実に進められている。
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