このような世論の変化をもたらした主な要因としては、新型コロナウイルスのパンデミックに対する政府の対応に加え、パンデミックをきっかけとする景気減速や社会不安の増大などが挙げられる。米国では、新型コロナウイルスの陽性者数が400万人を超え、死者も14万5000人を突破した。
新型コロナウイルス対策に関してトランプ大統領を支持する率は下降の一途をたどっており、指標の中でも最も評価の低い項目の1つとなっている。例えば、AP通信と全国世論調査センター(NORC)の調査データでは、このカテゴリーについて「支持する」と回答した人の割合が32%にまで落ち込んでいる。また、大統領の経済政策に対する評価も急落しており、この分野でもバイデンが徐々にトランプとの差を縮めている状況だ。
今後の注目点としては、共和党内の動向が挙げられる。党内にはこれまでもトランプ大統領に異を唱える不満分子が存在したが、ここ数か月は批判が表立って表明される機会が増え、不満の声も大きくなっているように見受けられる。
反トランプを掲げる共和党議員は複数のグループを立ち上げ、大統領の再選阻止に向けて活発に動いている。その1つ、リンカーン・プロジェクト(Lincoln Project)は、トランプの問題点を批判する、率直な内容の広告を次々と発表している。世論調査の結果をみる限りバイデンは、共和党を支持する有権者の間でも、決して無視できない割合の支持を獲得しているようだ。
こうした情勢を踏まえて、ワシントン・エグザミナー(Washington Examiner)の政治部記者、エミリー・ラーセン(Emily Larsen)は「バイデンを支持する共和党支持者は、かつてのレーガン・デモクラット(1980年の大統領選挙で、現職のカーター大統領を見限り、共和党候補のレーガンに投票した民主党員)の再来か?」と指摘している。