ビジネス

2020.08.05

加熱する米中摩擦、TikTokは中国から米国に軸足を移すか


中国のネット企業は、国家情報法に基づき、中国政府が要求するあらゆるデータを引き渡すことが義務付けられています。データの要求が及ぶ範囲は中国国内だけにとどまらず、例えば米政府がFacebookにデータを要求する場合のように、令状や裁判などといった手順を踏む必要もありません。

しかも、TikTokは実際に中国政府からの圧力をほのめかすような行動をしてきているため、より一層懸念が高まります。天安門事件やチベット独立運動香港のデモ#BlackLivesMatterに関連するコンテンツの検閲などはほんの一例です。また、中国政府が検閲を行えるということは、逆に彼らの宣伝に使われるおそれもあるということです。世界中の何百万人もの人々に影響を与えられるこのアプリは、それを自在に管理できる中国共産党にとってかつてないほど強力なプロパガンダツールになり得ます。彼らの思想を支持するコンテンツや、戦略的に都合がいい政治家候補を後押しするコンテンツなどを積極的に配信することもできるでしょう。なんの制限もなくこのように利用されてしまっては、各国の政府にとって深刻な事態を今後招く可能性があります。

このような状況であるため、中国系以外の株主を過半数としたスピンオフを実行するか、または一部の国で禁止されることを受け入れる以外にTikTokに道はないと言えます。Bytedanceのこの窮地は、同社の株主でもあるSequoiaおよびGeneral Atlanticにとっては利益を生み出すチャンスです。そして、私たちのような第三者とっては、インターネット界に将来起こり得る変化を示唆しています。1997年に中国のグレート・ファイアウォールが作られて以来、インターネットは主に「中国」と「世界」の2種類に分断されてきました。中国ではこの相反するインターネットが混在した状態が何年も続いてきました。しかし、中国企業が海外展開に向けて意欲的になるにつれて、2つインターネットの違いは次第に無視できないものになっていくでしょう。

連載:VCのインサイト
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文=James Riney

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