この契約は、パンデミック後の顧客離れを危惧する不動産業界にとっては嬉しい報せと言えそうだ。ニューヨーク市は今から約1カ月前に、コロナ後の経済再開のフェーズ2入りを宣言したが、オフィス勤務を再開させた人々は全体の10分の1足らずで、不動産業界の前途には暗雲が立ち込めている。
フェイスブックとグーグルは、従業員らに2021年までリモートワークを許可し、ツイッターは無期限でそれを認めている。しかし、今回のフェイスブックの決定は、大手のテック企業が今後も、ニューヨークに拠点を持ち続けることを示している。
フェイスブックはここ1年で、20万平方メートルに及ぶオフィス物件の賃貸契約をニューヨークで締結しており、その全てはペンシルベニア駅とハドソン川の間に位置している。マンハッタンのウエストサイドはシリコンバレー企業のハブとなり、アップルやアマゾン、グーグルらが拠点を構え、“シリコン・アレー”と呼ばれている。
マンハッタンの中間エリアに100万平方メートル近い物件を保有するボルネードは、自社の20億ドル以上の資金と、政府からの30億ドル以上の支援で、ペンシルベニア駅付近のエリアの再開発を進めてきた。
ボルネードの株価は過去52週間で44%近く下落していたが、今回の契約のニュースを受けて、時間外取引で7%以上も上昇した。
1912年に竣工されたジェームス・ファーレー郵便局の建物は、米国の建築界に多大な影響を与えた名門建築事務所、マッキム・ミード&ホワイトの設計で知られている。この建物をリノベーションしたファーレービルには、フェイスブックの新オフィスに加え、約1万200平方メートルのモールが新設され、フルサービスのレストランも入居することになる。
ボルネードによると、リノベーションは2020年末に完了する予定という。「フェイスブックのコミットメントにより、ニューヨークが今後、米国の第2のテクノロジーのハブとして発展することが確実になった」と同社CEOのSteven Rothは声明で述べた。