官民連携して、渋谷をこれからのライフスタイルを実験する「自治区」に
楠本:みなさんのお話を聞いていて、やはり「渋谷をもう1度再考しよう」と強く思いました。渋谷って、ダウンタウンの象徴だと思うんですよね。キャットストリート側はファッション、宇田川のほうは音楽やサブカルがある。「100BANCH」はスタートアップの拠点になっていて、青山方向にいくと大企業がある。
色々な文化が溜まって、醸成されて、発酵していく感じが渋谷という街の魅力なのですが、コロナによってそれがうまく作用しなくなってしまった。
これからはそのやり方の一つが「デジタル化」だと思いますが、それだけだと渋谷の「お祭り感」をリアルに体現することができません。難しいとは思いますが、世界中でまだできていないチャレンジだから、渋谷らしくて面白いと思っています。
宇川:まさに、リアルでの発想と、その発想をいかにデジタルの世界にフィードバックしていくかは僕も考えているテーマです。毎日感染率や警戒率は、変化していますよね。そういう現行のデータをデジタル上で日々管理して、それを現実にフィードバックすることもできるはずです。例えば、エンターテイメントの現場だったら「今日は○メートルの間隔をあければ、何人フロアに入れられる」というデータが出てくると思うんです。
いかにデジタル上で得られたフィードバックをリアルに反映させていけるかがこれからのテーマであり、新しい渋谷のイメージだと思っています。もちろん、リアルな世界は絶対的に重要です。冒頭で話した「人と人との真の意味での交流」をどうしていくのか? ということも考えれば、コロナ禍の渋谷だからこそ世界に類を見ない、極めて斬新なアプローチができるんじゃないかと思います。
楠本:飲食店と街のあり方を考えたとき、宇川さんと全く同じことを考えていました。「人の気持ち」と「科学」がとても近くなってきているからこそ、渋谷がそれをクリエイティブに発信していく実験場になるのはどうでしょう。
どうしても人が集まるロケーションなのだから、未来のためにも、全部実験したらいいんじゃないかなって思います。今までは「儲かるか・儲からないか」がKPIだったけど、これからは「未来が見えるかどうか」という視点で街をつくる。
高木:たしかに今までは「自社がどう生き残るか」という視点でしたが、業種関係なくみんなで協力して戦う時代になったことを感じますね。アイデアを出し合いながら、みんなで新しい渋谷をもう一度作っていくのがいいのでしょうね。
楠本:みんなで作っていく時代において、渋谷はクレイジーなビッグピクチャーを描いたほうがいいはずなんです。それが「未来的だね」と思われたら世界が渋谷に注目するんじゃないかな。コペンハーゲンに、クリスチャニアというヒッピー達による自治区がありますが、渋谷も「渋谷区」ではなく「渋谷自治区」にしてしまうとか。
「デジタルトランスフォーメーションとクリエイティブなライフスタイルを徹底的に掘り下げます」みたいな宣言をしちゃうとかっこいいかな、なんて思っています。渋谷はそれくらいが丁度いい気がするし、今はそういうことを言えるタイミングだと思うんです。