楠本:みなさんご存知のように、飲食業界も影響を受けています。緊急事態宣言が解除され「このまま戻っていけるかな」と思いましたが、今また感染者数が増えてきている。恐らく僕以外の経営者のみなさんも、始めは「よし、数カ月の辛抱なら、テンション上げてなんとか乗り切ろう」と思っていたはずです。
ですが、どうやらこれからも「アフターコロナ」と「バックトゥーコロナ」を行ったり来たりすることになりそうです。これを繰り返していくうちに、段々と心が折れないようなやり方を模索していきたいですよね。
あとは、みなさんの話を聞きながら、渋谷って飲食やファッション、音楽、美容がそれぞれ連動して、エコシステムが構築されているなと改めて感じました。
このエコシステムによって、渋谷のスタートアップやベンチャーの土壌が生み出されてきたと思うんです。だけどそれが、今はちょっと分断されている感じ。売上はもちろんなのですが、そこが悔しいですね。
「街のEC化」「ムード作り」「新しいエコシステム」。ウィズコロナの時代を、渋谷はどう乗り越える?
宇川:「エコシステム」という言葉が出ましたが、今後に向けて、新たなインフラを作る必要があると思っています。楠本さんが仰っていたように、パンデミックが何度でも起こるのがウィズコロナの時代。でも、エイズやコレラとも一緒に付き合っているじゃないですか。ウイルスと人間の歴史からヒントを得ながら、新しいエコシステムを形成できるかどうかだと思います。
Naz:みなさんの言う通り、渋谷って「おしゃれをして美味しいご飯を食べて、いい音楽聞きに行こう」という、全て繋がったカルチャーが体験できる街です。つまり、それぞれの業界があるからこそ活動ができているのであって、どれかが欠けてしまってはバランスが取れません。だからこそ、音楽業界においても、新しいプラットフォームが必要です。
既存の配信プラットフォームでは正直、投げ銭をいただいても、ほとんどアーティストには利益のないシステムになっています。私達はどう支援していただき、どんなお返しをしていけるか。この問題を解決するためにも、文化やエンターテイメントを理解した人間が新しいプラットフォームをつくることが重要だと思い、実現に向けて動いているところです。
松井:うちの会社で開催してきた「SHIBUYA HARAJYUKU FASHION FESTIVAL」というイベントがあるのですが、この状況で開催することができなくなりました。
今考えているのは「街のEC化」。SHIBUYA HARAJYUKU FASHION FESTIVAL自体をWeb上に移行して、国内外の方が渋谷に来ることができなくても、渋谷を体験してお買い物ができるようなECを制作中です。
先ほどお話した「若手のデザイナーがバイヤーに見てもらえない問題」も、デジタル上で見てもらえるような展示会を作ろうとしています。あとは、ムード作りも重要だと思います。「それを楽しんでもいい」というムードを作ることができるかが鍵になるはずです。
高木:ムードをどう作るか、はまさに僕も考えているところです。美容室は、Webの活用がなかなか難しい。だからこそ、「渋谷の美容室は安心・安全ですよ」と伝えていくことがまずは大切だと考えています。
実際、美容師のコロナ感染者数ってゼロなんです(※7月21日時点)。国家資格保有者ですし、衛生面の配慮は非常に高い基準で徹底している自負があります。街全体がまずはそういう感染対策を徹底した上で、「こんな魅力がある」「来る価値がある街だ」と伝えていけたらと思っています。