米機関が「マネーの虎」形式でコロナ検査企業を選抜、7社に賞金

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米国国立衛生研究所(NIH)は7月31日、新型コロナウイルスの検査技術を開発する7社と契約を結び、総額2億4870万ドル(約264億円)の賞金を授与することを決定した。米国では新規感染者の増加が続き、検査体制の拡充が求められている。

連邦政府はこれらの企業の技術によって、9月までに一日あたり数十万件の検査が追加で実施可能になることを望んでいる。

今回の資金は2社の上場企業(QuidelとFluidigm)に加え、5社の非上場企業(Mesa Biotech、Talis Biomedical、Ginkgo Bioworks、Helix OpCo、Mammoth Biosciences)に与えられる。

これらの企業のうちGinkgo Bioworksはマサチューセッツ州ボストンに本拠を置いているが、それ以外の6社は全てカリフォルニア洲を本拠としている。

NIHのディレクターのフランシス・コリンズ博士は7月31日、「検査体制を迅速に拡充する上で、今回の賞金は重要な意味を持つ」と述べた。

米国での新型コロナウイルスの感染者数は累計440万人以上に達し、15万人以上が死亡している。検査の需要が供給キャパシティを大幅に上回る中で、NIHは携帯型の検査デバイスからラボで使用する大型の検査機器まで、様々なテクノロジーの精査を進めている。

今回の7社を選抜するにあたり、NIHは「RADx(Rapid Acceleration of Diagnostics)」と呼ばれるイニシアチブを立ち上げ、日本のテレビ番組の「マネーの虎」にインスパイアされた米国のリアリティ番組「シャークタンク」と似た選考会で、650社を超える申し込み企業を選抜した。このイニシアチブの立ち上げには、連邦政府の景気刺激策の一部である15億ドルの資金が投じられた。

7社中の3社はPOCT (臨床現場即時検査)を開発する企業で、4社は検査施設での検査技術を開発している。このうち、サウスサンフランシスコ本拠のMammoth Biosciencesは、従来のPCR検査よりも短時間で可能なCRISPR-Cas12aに基づくDETECTRシステムにより検査容量を数倍まで引き上げることを目指している。

Mammoth Biosciencesの共同創業者のTrevor MartinとJanice Chen、Lucas Harringtonらは2019年のフォーブスの30アンダー30に選出されていた。

一方、ボストン本拠のGinkgo Bioworksはオートメーション技術を用い、1度に数万件のテストを実施し、24時間から48時間で結果を通知する次世代のシーケンス技術の開発を目指している。同社はフォーブスの2019年の次世代スタートアップ(Next Billion Dollar Startup)に選出され、企業価値は40億ドルを突破している。

サンマテオ本拠のHelix OpCoもGinkgoと類似した、自動化とシーケンス技術を活用した検査ソリューションの開発を進めている。この2社の技術は、学校や医療機関で実施される、大人数を対象とした検査の迅速化につながると期待されている。

NIHは今後数週間以内に、第2次の受賞企業を発表する予定で、引き続き20社の技術の精査を進めている。「イノベーションの分野では全ての企業がサバイブできる訳ではない」とコリンズ博士は述べている。「我々は既に7社を選出したが、残念ながら選ばれなかった企業も数多く存在する」

編集=上田裕資

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