ビジネス

2020.08.04

マイクロソフトがTikTokを喉から手が出るほど欲しがる理由

マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ(Photo by Sean Gallup/Getty Images)

GAFAと総称される米国のテック業界大手4社は7月29日、米国議会で反トラスト法(独占禁止法)絡みの厳しい質問を浴びせられた。その数日後にマイクロソフトCEOのサティア・ナデラはホワイトハウスに電話をかけ、動画SNSアプリ「TikTok」買収に向けた協議を行った。

400億ドル(約4.2兆円)規模と予測されるTikTokの買収は、マイクロソフトにとって最も巨大でリスクの高い取引になりそうだ。同社を率いるナデラは2014年にCEOに就任以降、リンクトインやGitHubなどの買収を進め、企業買収が下手なマイクロソフトのイメージを刷新してきた。

ナデラは今、中国企業が生んだTikTokを傘下に収めることで、マイクロソフトのコンシューマ向け事業を再構築しようとしている。

シリコンバレーのベンチャーキャピタル、Sapphire Ventures共同創業者のJai Dasは「グーグルやアマゾン、フェイスブックらは広告から巨大な収益をあげている。マイクロソフトはTikTokを買収することで、広告事業で大きく飛躍できる」と話す。

マイクロソフトは8月3日、TikTokの米国事業の買収に向けた承認を、トランプ政権から取り付けた。ホワイトハウスはこのアプリを安全保障上の脅威とみなしているが、1億人以上が利用するTikTokは巨大な広告売上を生み出している。

マイクロソフトは8月2日の公式ブログで、TikTokの米国やオーストラリア、カナダ、ニュージーランドの事業の買収手続きを9月15日までに完了させ、米国本拠の企業らを少数株主として招くと宣言した。プライバシー面の懸念に配慮し、全てのユーザーのデータは今後、米国内のサーバに移転し、海外に貯蔵されたデータは全て削除するという。

テック業界の関係者らは、マイクロソフトの動きを理にかなったものと見ており、投資家たちもこの宣言を歓迎した。8月3日の米株式市場でマイクロソフトの株価は5.6%高となり、時価総額は買収で支払う額以上の上昇となった。

ナデラがCEOに就任する以前のマイクロソフトは、巨額の買収で失敗を繰り返してきた。2011年に前CEOのスティーブ・バルマーの指揮下で、同社は85億ドルを支払い、スカイプを買収したが競合のアップルやフェイスブックのプロダクトほどの成功は収められず、最近ではZoomなどのライバルに敗退している。

さらに、2013年には携帯端末メーカーのノキアを76億ドルで買収し、モバイル事業の主軸に据えようとしたが、Windows Mobile事業は暗礁に乗り上げている。また、グーグルの検索エンジン事業に対抗しようとしたBing部門も目立った成果をあげられていない。
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翻訳・編集=上田裕資

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