ビジネス

2020.08.07 07:00

佐賀県でヒットしている「地域魅力」はこうして作られた


「えくぼとほくろショップ」の作り込みを手伝ってくれたのは、大工道具をもっていて体力に自信がある市内のお茶農家さんたち。目利きでありサービス業のプロである旅館経営者や観光協会などの自治体の方は、工場見学の動線や案内の仕方が「顧客目線」になっているかのチェックをお願いしました。

窯元のホームページを作る勉強会には、市内の事業者にも声をかけました。ホームページを作りながら、顔は知っているけれど話をしたことがないご近所さんたちとネットワークを構築。一番盛り上がったのはホームページが形になった時よりも、終わった後の「連絡先交換会」でした。

集落と業界内にしかなかった窯元のコミュニティーは一挙に広がりました。


見学時の動線や案内がわかりやすいかをチェックしている旅館の経営者たち

地域魅力から生まれる地域ブランド


大きな労力も費用もかけず、市内の事業者からの協力を得て「えくぼとほくろ」はオープンにこぎつけました。

訪問されたお客様は、窯元の焼き物に対する想いだけではなく、キズをさまざまなメッセージとして受け止めてくれました。たとえば、商品価値とはなんなのか、自然と産業の関係、職人さんのこだわり、などです。

キズについてのクレームもなく、値切る人はほぼ皆無です。むしろ「こんなに丁寧につくっているんですね!」とか、「こんな小さなキズでも規格外品になるんですか」と、職人さんの想いに共感して友人を伴ってリピートしてくれる人たちが多数現れました。キズがあるから安くする、では、こうはならなかったでしょう。

「えくぼとほくろ」の企画は、この後も進化を続け、オープンから2年後には1カ月にバスが8台、1000人ものお客様がやってくるようになり、産地に経済的な貢献をもたらしました。(数値はコロナ禍前のもの)

しかし、この成功に裏には、企画のひねりの良さだけではなく、窯元自らが動いた地道な活動がありました。

それは「広報」です。次回は、「マイクロツーリズム時代の広報」について紹介します。

連載:旅する“元”広報
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文=南雲朋美

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