中国が対米貿易合意を軽視、大豆輸出量が大統領選に影響も

Joe Raedle/Getty Images

2020年1月はじめ、米中貿易交渉をめぐる「第1段階の合意」で中国が約束したことを覚えているだろうか。両国が署名を済ませ、米国が報復関税の一部を引き下げたら、米国産大豆を大量輸入するという約束のことだ。その後、2020年1月15日に署名式が行われ、2月には米国の関税が引き下げられた。ところが現在、中国は大豆を購入する相手を間違っているようだ。

中国の輸出入管理と税関事務を担う海関総署が7月26日に公表したデータから、中国が1か月に輸入するブラジル産大豆の量が、2020年6月に過去最高に達したことが明らかになった。6月のブラジル産大豆の輸入量は1051万トンで、前年同月比で91%も多い。また、前月5月と比較しても18.6%増えている。

全体的に見ると、中国が6月に輸入した海外産の大豆は合計1116万トンなので、ほとんどがブラジル産ということになる。

それ以外の輸入大豆の多くは米国産だ。中国は6月に米国から26万7553トンの大豆を輸入したが、前年同月比で56.5%も少ない。前月5月との比較では45.6%減っている。

米国で貯蔵されている大豆は、ブラジル産に比べると、収穫されてから日が経っている。ブラジルと米国では収穫時期が逆で、米国産は秋に収穫され、ブラジル産は春に収穫されるからだ。

それでも中国は、米国が大豆の収穫を迎える今秋に関しても、米国からの大豆輸入を控えている。

貿易専門の記者ローリ・アン・ラロッコ(Lori Ann LaRocco)は、「行動は言葉よりも雄弁だ。第1段階の合意内容を履行するためには、中国は大豆を含めた米国産農産物の輸入量を大幅に増やさなくてはならない。時間はあまり残されていない。米国通商代表部(USTR)も、トランプ政権も、輸入量の少なさをそのまま無視するとは思えない」と話す。

ラロッコは、書籍『Trade Wars: Containers Don’t Lie(貿易戦争:コンテナはウソをつかない)』の著者で、さまざまな業界団体や港湾当局から得た貿易データを精査し、貨物船の積み荷とその目的地を突き止めている。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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