ビジネス

2020.08.21

競合はいない。「セントラルキッチン型」再生医療ベンチャーの挑戦

セルソース株式会社 代表取締役社長CEO、裙本 理人氏


実際の治療のイメージですが、例えば、変形性膝関節症の方がいたとして、今までの治療法では、選択肢は「ヒアルロン酸注入」か「人工関節」がメインでした。ヒアルロン酸注入というのは、歯車に潤滑油を入れるような、あくまで対処療法に該当します。また、人工関節を入れるのは患者に非常に負担がかかる治療法で、手術とリハビリを要するため社会復帰に一か月程度かかります。

ヒアルロン酸注入ではもう効かないのに注入を続けたり、人工関節にするにはまだ早いのに人工関節による治療に進んだりと、その中間的な治療がなかったんです。まさに「医療のギャップ」が存在しているんですね。そこを解決するのが、セルソースが提供する細胞加工の事業を通じた再生医療です。

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治療ニーズイメージ

なお、株式会社が細胞加工を行うことは「再生医療等安全性確保法」の規制下にあり、「特定細胞加工物製造許可」が必要となります。現在は、Aさんという人から採取した細胞をAさんご自身に戻す形式だけをセルソースでは実施しています。Aさんの細胞をBさんに戻すような形式は、まだ研究段階です。当然、Aさんの細胞を複数人に戻すというような世界についても、今後は想定しています。

リスクプレミアムが大きい分、「競合がいない」


──競合の存在や大手の参入が懸念されませんか?

同種の許認可は60超の施設が持っていますが、半分以上は大学や研究施設です。また、現状、明確な競合はいない状況です。当社は事業のスタートが早かったこともあり、先行者メリットがあります。1万例以上の臨床データがあるためEBM(Evidence-Based Medicine)を実行できる存在価値があります。臨床データこそ最大の資産であり、当社の強みになります。

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この世界は大手にとっても当然未知の領域で、何億円と投資しても、一気に利益が出るわけではありません。リスクプレミアムが大きいんです。

もし、大手が入ってきたとしても、そのときは大手が広告宣伝や販促等の資本を投下するでしょう。さらに市場が拡大するきっかけになると思います。この市場は一社が独占できるほど小さくはありません。参入が増えることで市場が拡大する。結果、その中核にいるセルソースの事業も大きく拡大する。そのように思っています。
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取材・文=曽根康司 撮影=帆足宗洋 編集=石井節子

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