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加工工場の立ち上げ時には、毎朝、7時過ぎには現地のワーカーと一緒に建築現場に行って朝礼をしていました。通勤は相乗りバスです。建築現場にはロシア人が300人以上いましたが、どうも上手く機能しない。日本や欧米からも数十人がスーパーバイザーとしてヘルプに来てくれている。このままではいけないと思い、一緒に作業着を着て、クレーンの位置の指定とかを地道にやりました。

とにかく効率的に建築を進める必要があり、限られた機材をどのように配置するかが、建築スピードにとって極めて重要な要素であったのです。連日連夜で建築現場に出続けた結果、熱意が伝わり、そこからは、すごい勢いで加工工場が形となっていきました。

結果、2009年の年明けから稼働することができました。これはいい成功体験になりました。一切苦労とは感じなかったです。それ以上に充実していました。

休みの日は現地の仲間とランドクルーザーで猪や鹿の狩りに行って、その場で茹でて食べたりしてました。ライフルも撃ちましたし、スノーモービルにも乗りました。当時住んでいたのは旧ソ連時代の5階建ての家で、現場に張り付くときはログハウスの山小屋生活といった塩梅でした。補足すると旧ソ連時代は住宅のフォーマットが決まっていたので、ロシアは5階建てが多いんです。

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ロシア 真冬のプラスタンの海:裙本理人提供

技術ドリブンでなく「課題ドリブン」


──まさに武勇伝ですね。日本にディズニーランドを作るとき、オリエンタルランド方が酒を飲みかわしながら、候補地の方と交渉をしたという話を思い出しました。商社で学んだ特有の知見や文化はありますか?

ビジネスの根幹を学んだ気がします。人にしっかり向き合うこと、相手のニーズをとにかく探る。商社というのは、何も作っていません。仕入先の求めているもの、売り先が求めているもの、その真ん中の解を求めることを徹底的に教え込まれました。新しい取引先にはとにかく、懐に入り込んで課題やニーズを探ること。

また、職場の雰囲気はとにかく自由闊達でした。結果を出すことが目的でアプローチの方法は任されていました。一方で、目標へのコミットも明確です。これは、今のセルソールの軸にもなっています。課題ドリブンと呼んでいますが、事業やサービスの立ち上げは課題が起点となります。社会にある課題を解決するからビジネスになる。課題がなければマーケットはないと思っています。

バイオベンチャーは技術があるので、どうしても、技術ドリブンになりがちなのですが、一方で課題の不在という欠陥を抱えてしまうこともあります。つまりその技術を開発したとしても結局誰も使わない、とかマーケットがそもそもないとか。その点、自分はドクターでもサイエンティストでもないので、冷静に判断出来ているのかも知れません。

取材・文=曽根康司 撮影=帆足宗洋 編集=石井節子

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