「メイド・イン・アフリカ」のEコマース促進へ
6月18日のプレス発表では、ラマポーザ大統領とマシウィア特使が中心となり、AMSPのビジョンと内容が説明された。AMSPの基本的な仕様は、シンプルなEコマースサイトだ。大統領が「アマゾン、アリババ、eBayのようなものだ」と表現するサイト構築には、アフリカの若き起業家や開発者たちが携わった。
AMSPでは、保健省のスタッフなど権限を持った政府関係のユーザーがログインし、WHOやアフリカCDCが認可した安全な医療品を、各国に割り当てられた量に基づいて購買できるようになっている。サイトのデモ映像を見る限り、ユーザーインターフェイスや購入の流れは、一般向けのEコマースサイトに限りなく近い。サイトはAUの公用語である英語、フランス語、アラビア語、ポルトガル語の4言語に対応している。
現在サイトに上がっている商品は、テストキットや体温計などの診断用品、N95マスクやフェイスシールドなどのPPE(個人用防護具)、人工呼吸器などの医療機器、サニタイザーなどの感染防止用品、そして治療薬(現在は、抗炎症薬「デキサメタゾン」のみ)。治療薬は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の協力により、約100万人分のタブレットが確保された。
(AMSPサイトのスクリーンショット)
AMSPの運用開始から約3週間後のマシウィワ特使からの報告によると、日々40件ほど新規サプライヤーからの参加申請があり、随時、医療用品が拡大していく込みだ。また、今後は政府関係者が承認した医療関係者なども直接AMSPから購買できるようになる。
AMSPの構築と展開は、全世界的に不足しがちな医療用品をAUが仕入れ、効果的に集約・配分することで、小国のニーズである小ロットオーダーやコスト削減を実現するという狙いがある。特使によれば、以前30ドルほどだった「N95のマスク」は、AMSPが約2億個確保することで2ドルにまで引き下げることができた。
また、AUは「メイド・イン・アフリカ」の商品をより充実させ、流通促進させていく方針を掲げており、サイト上に同様の商品でアフリカ製のものがあれば、その選択肢が提示される。これはアフリカに拠点を持つ製造会社にとっての新たなビジネス機会だ。例えば、現在、フォルクスワーゲンの南アフリカ工場では、フェイスシールドや人工呼吸器などCOVID-19関連の医療品の製造を開始している。
アフリカ各国の連携、大陸内貿易とEコマース、「メイド・イン・アフリカ」の促進がもたらすのは、大陸の経済的自立という実質的な面だけではない。AUが主導する汎アフリカ主義的な思想(Pan-Africanism)に基づいたAfCFTAやAMSPの展開と成功は、アフリカ人たちが精神的にも脱植民地化を達成し、誇りを取り戻すために欠かせない。そして、その精神的自立と自信が、新たなアフリカン・イノベーションの原動力となる。AMSPをきっかけに、よりアフリカ間の連携が強化され、経済と社会が活性化する未来が見え始めている。
連載:旅から読み解く「グローバルビジネスの矛盾と闘争」
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