中学受験で「社会」を後回しにすると危険な理由

中学受験 社会科専門塾「スタディアップ」代表、野村恵祐氏の著書から


理論的には、「暗記をする前に問題演習をする意味」はまったくない。とくに夏休みは時間が多く取れるから、家庭学習で「暗記」の時間を増やすべき、という。社会に関しては、重要度のバランスの問題でいうと、実に塾での授業が2割、家での暗記が6割、問題演習が2割、というから驚きである。

「もちろん、塾で講義形式の授業を受けることは、家庭学習で暗記をする際のフックになるので、塾に通っていることで家での取り組みやすさが違ってはきます」

「暗記」と「問題演習」は違う!?


ちなみに、「暗記」と「問題演習」の違いはなんなのだろう。

「暗記は、正解が『ページをめくらなくても見られる』状態。いわゆる赤いシートで正解を隠し、口で解答(キーワード)をとなえてサッとシートをずらして確認する、これの繰り返しが『暗記』です。対する問題演習は、正解がテキストの巻末にまとまっているか、別冊になっている。回答のしかたが、模試や受験本番に似ている状態です」

だが、「正解がめくらなくても見られる」状態でも、重要キーワードを一度で覚えるのはなかなか難しい。だから暗記は、これと決めたテキストを2周、3周と繰り返すことによって、どんどん「塗り重ねていく」イメージで取り組むべき、という。

夏まではとにかく、どんな中学でも出題されるような重要キーワードを、徹底的に何度も何度も「塗り重ねる」。そして秋からは、過去問を中心とした志望校対策に取り組む。これは「インプットし終えたキーワードを、出題傾向・出題形式に合わせてアウトプットする訓練」だという。学校によって「問われ方」が違うためだ。

ちなみに「暗記」は、チェックペンと赤シートがあれば、自分の使い慣れた参考書やプリントなど、どんなものでも暗記用テキストにできる。そしてチェックペンで線を引く際には、次の注意点があるという。

1. 単位には線を引かない(例:「経度の差が15度で」の「15」にだけ引く、「度」には引かない)。

2. 白地図上の都道府県名の名称は、末尾を残す(「兵庫県明石市」の場合、引くのは「兵庫」と「明石」だけ、「県」と「市」には引かない)。

3. 1つの文章の中で、チェックペンの線をやたらと引かない。何が覚えるべきポイントかがわからなくなるため。(『中学受験 第一志望に合格したいなら“社会”の後回しは危険です』より)。

「こういう、ちょっとした暗記のコツを知っておくだけで、『暗記上手』にはなれるんです」
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文・編集=石井節子

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