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顔認証は「入口」にすぎない。その先の活用が重要


SenseThunderをプロダクト販売のみならず、サブスクリプションでも提供しているのは、次の段階を見据えてのことだ。

「サブスクリプションを導入したのは、プロダクトに紐づく弊社のソフトウェア・プラットフォームを活用いただいてイノベーションにつなげたい理由があります。このソフトウェアをレストランに導入した場合、顔認証によってリピート客であるかを判断することができ、さらに、前回の注文を確認する機能を装備することもできます。リピート客に対して、「チーズ入り、オニオン抜きのハンバーガーにしますか?」などこちらから提案することができるので、注文処理時間が削減され、混雑緩和にもつながるというわけです。短いランチタイムで急いでいるお客さまにもメリットがるのです」

顔認証システムの画面
表情を読み取って数値化する。同社の顔の高い読み取り精度を生かしたサービスの広がりはすでにソリューションとして提供されている。

日本はまだ顔認証を起点にした各種サービスは浸透していないが、中国では2017年9月にアリペイがペイメント機能を開始。今では、2億5000万人ものユーザーが顔認証で支払いを済ませている。

「アメリカで最初に導入したのは、アメリカン航空でした。搭乗券の代わりに顔認証システムを採用したのです。その後の調査で、乗客の約70%が紙の搭乗券やモバイル機器による認証よりも、顔認証を支持したという結果が出ています。つまり、多くの人はスマホなどのモバイル機器ですら持ち歩きたくないのです。また、コロナ禍によって顔認証の導入はさらに進むと考えています。クレジットカードの暗証番号を押す必要もなく、完全な非接触体験ができるので安全性の確保においても有効です」

プライバシーへの不安は積極的に取り除く


センスタイム社の顔認識技術は、人間の目による認識能力を超える精度を誇る。そこには生体認証技術も含まれており、カメラに映る人物が本物なのかを見極める能力も高い。写真をかざして通り抜けるなどは不可能だ。しかし、精度が高い反面、プライバシーの問題などに懸念が残る。

「スマートスピーカーの普及からもわかるように、人間はプライバシーよりも利便性が高いものを選ぶ傾向があります。また、弊社はユーザーのデータ収集、共有、販売はしていません。ですから、クラウドも必要なく、オフラインで利用することができます。イメージとしてはSUICAのようなICカードのようなものですね。オフラインで使えるこれらのサービスは、今後スマホを超える可能性を秘めています」



もうひとつ大きな懸念材料は、センスタイム社が中国企業であることだ。昨今のニュースを鑑みると、個人情報や各種データが中国に流れてしまうのではないかという心配もある。

「その点は、創業時にもっとも懸念したことです。そこで、第三者機関の監査を受け、データが中国に送信されていないことを証明しています。また、宗教、人種・民族、政治的見解といった基準で人を選別する機能も利用もありません。そういった倫理的なポリシーも、ガイドラインを作成し遵守しています。私たちのミッションは、あくまでもAIや顔認証を使って、人々の生活をよりよいものにすることなのです」

文=富山 英三郎 写真=西川節子

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