国際モータージャーナリスト「ライオンのひと吠え」


トラックホークの一番凄い特徴はボンネットの下に隠れているエンジン。6.2リッターのV型8気筒で、これにスーパーチャージャーを装備して710ps/868Nmという強烈なスペックを持っている。優れた4WDシステムが搭載されているおかげで、4つ足のトラクションがシビアなので、0-100 km/hは3.5秒とスーパーカー並み。

これだけのパワーがついていると、スロットルを丁寧に踏むのに慣れなければならない。いちど慣れると、トラックホークは市街地でも、高速道でも、サーキットでも限りなく楽しいクルマだ。

後ろから見たトラックホーク

でも、やはり710psがついているので、なかなかそのパワーが使いきれない。高速道路の料金所から、アクセルをベタに踏んでみたら、爆発的な加速性を感じ、3秒ほどで法定速度まで達していた。4WD付きだからこそ、加速は安定しており、3000回転からはV8のドロドロとした重低音が鳴り、同時に独特なスーパーチャージャーの音も鳴って、まるで、バス・トロンボーンとソプラノ・サックスが共鳴するホーン・セクションみたいだ。

「オート」「スノー」「スポーツ」「トラック」など5つのドライブモードがついている。「スポーツ」に入れると、サスペンションが硬くなり、ステアリングがよりシャープに変わり、そしてアクセル・レスポンスが良くなる。もちろん、エキゾーストノートもよりアグレッシブになる。

僕は「スポーツ」モードが意外にしなやかで一般道でも硬すぎず乗れたので、トラックホークのとんがった性能がより楽しめたと思う。何度アクセルを踏んでも、コーナーを曲がっても、これは興奮するやみつきのSUVだ。ステアリングは手応えと重さはちょうど良くて、しかも路面からフィードバックが取れている。そのアナログな感覚はたまらない。こんなクルマに乗る人は燃費なんて考えないだろう。4.5km/Lぐらいしか出ないから。

もう一つ高く評価したのは、リッチな室内の質感。濃い赤色の本革とカーボンファイバー調の組み合わせは、その気にしてくれる。ハンドルも太くて握り甲斐があるし、インパネのデザインやスイッチ類は欧州車のスーパーカーの出来栄えにかなり近づいている。センターコンソールの大型タッチスクリーンは最新のものなので、ナビや車両のセッティングは気楽にアクセスできる。

運転席の写真

このジープ車で走っていると、スマホがまだ発明されておらず、しかも、ドゥービー・ブラザーズ、イーグルズ、レッド・ツェッペリンなどのコンサートにまだ行ける時代にいる感じがした。なんかその加速感といい、その吠えるようなV8エンジンサウンド、クルマの動きは全てアナログで、五感が気持ち良かったから。

弱点は、というとブレーキかな。同車のブレーキは6ピストン付きのブレンボー製のシステムがついているけど、正直なところ、制動力はギリギリ足りている、ところだと思う。やはり、車重2470kgとこれだけ重いSUVで、710psという世界最強のSUVだけに、本当は8ピストンのブレーキが欲しいだろう。でも、それは、サーキットなどでスポーティに走るならの話なので、市街市での法定速度域では、このブレーキで十分だろう。

SUV史上最強のV8エンジン、オーケストラ並みの音のチューニング、ゴージャスな真っ赤な本革の室内、スポーティな走りと乗り心地、そして世界一のコストパフォーマンスを誇るトラックホークはクルマ好きにはたまらない。



スーパーカーに乗りたいけど、家族のためにSUVをどうしても乗らなければならないパパにとって、最高のチョイスだろう。

文=ピーター・ライオン

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