アマゾンのこのプログラムに参加できるのは、限られたごく少数のブランドだ。これまではアップルなどのように、偽造品に悩んできたハイエンドの消費者向けエレクトロニクスのブランドなどの利用が中心だった。だが、これは唯一、厳しい状況に直面する高級コスメブランドをアマゾンのプラットフォームに引き寄せることができるプログラムといえるだろう。
アマゾンは「FOMO(取り残されることへの恐怖)」をよく理解している。いくつかの高級ブランドを呼び込むことができれば、機会を逃したくないその他の高級ブランドも、後に続くと見込んでいる。
また、フェイスブック、グーグルに続く3番目に大規模な広告プラットフォームとなっているアマゾンでの販売を開始することは、ブランドにとっては販売と広告における新たな機会の獲得にもなる。
ただし、アマゾンはどのブランドにも購入者にも同一の体験を提供する。ブランドが自社のECサイトと同じような体験を提供することはできない。サンプルを配布したり、購入前の顧客とコンタクトを取ったりすることもできない。
米レブロンの高級品部門のマーケティング担当バイスプレジデントは、高級コスメブランドがアマゾンでの販売に消極的なのは、顧客体験を自らコントロールできないと考えているからだろうと述べている。
アマゾンで商品を購入する人はアマゾンの顧客であり、そのことは各ブランドが同社から収集できるデータの量や質にも影響を及ぼす。アマゾンは、ブランドがデータに関連して対応を求めるべき「ウォールドガーデン(閉鎖されたプラットフォーム)」の一つだ。高級コスメブランドもアマゾンでの販売を始めれば、この点では同社と闘っていくことになるだろう。