史上最多の22人の候補者が出馬した今回、地方暮らしが長かった筆者にとっては初の都知事選だった。今回は街中に行く機会も少なく、選挙カーを見かけることはなく、インスタグラムやツイッターのSNSを中心に、情報収集をしてみた。
そんな中、3度目の選挙で約84万票を集めた宇都宮健児さんのSNS発信に興味を持った。「正義の弁護士」とも称され、反貧困ネットワーク代表として貧困問題に長く取り組んできた。地道で実直なキャラクター、ともなれば地味になりがちだが、彼のSNSでの発信は様子が異なった。
「うつけん」の愛称で呼ばれ、奇抜な手法で注目される泡沫候補と肩を並べるほど、ある意味、ぶっ飛んでいるようにも感じたのだ。現在73歳。彼の発信を支えたメンバーに、SNS戦略について聞いた。
取材に応じてくれたのは、SNS担当の柴田麻里さんと、選挙期間中に宇都宮さんのインスタグラムアカウントを開設したMさん(仮名)だ。
──まず都知事選の際の担当と、普段のお仕事を教えてください。
柴田さん:私は普段はフリーランスのライターや編集者として働いています。2012年の都知事選から宇都宮さんの広報をお手伝いしていて、今回からSNS担当をしています。主にツイッターの「宇都宮けんじ 広報」のアカウントでの発信に力を入れていて、フェイスブックも担当してました。
Mさん:僕は自分でアパレル雑貨のブランドを企画し、オンライン販売をしています。海外向けにインスタグラムを運営していますが、柴田さんから声がかかり、宇都宮さんの発信のお手伝いをしてみたいと思いました。5月末の出馬宣言の後、6月9日から宇都宮さんのインスタグラムを開設して手探りで発信してきました。
──SNS発信はどんなメンバーでされていますか。また事前に戦略を決めていましたか。
Mさん:30〜40代のボランティア約10人で運営しています。そこまで事前にすり合わせたわけでもありませんが、ツイッターとインスタグラムのSNSとしての特徴は違うので、その点は意識しましたね。TikTokも投票日4日前に別の担当者が始めました。
柴田さん:ツイッターって速報性が重要視されますよね。選挙戦では活動の告知が最も重要です。今回は新型コロナウイルスの感染防止のため、事前に街宣(街頭宣伝)の場所を告知せずに行い、その代わりにすべてネット配信しました。またZoomを使ったオンラインイベントにも力を入れていました。
普段なら選挙事務所に集まりますが、今回私はずっと自宅でリモートだったのでスケジュール確認の情報収集が大変でした。宇都宮さんは現場主義なので、自身の政策に関連する現場に行って関係者の話を聞いたりする「政策現場レポート」をしていました。人手が少ないながらも、宇都宮さんのそういうところをいかにうまく伝えるかを意識して、発信しました。