森岡 弘(以下、森岡):今回取り上げるのはこの連載初のウイメンズブランド、スイスで生まれたアクリスです。
小暮昌弘(以下、小暮):本誌では何度も取り上げられているお馴染みのブランドですね。名前は存じておりましたが、実際の商品を間近で拝見するのは初めてです。
森岡:目的をもち、自立した女性のためのラグジュアリーファッションとアクセサリーのブランドです。
小暮:最高級の素材と卓越したクラフツマンシップによって生まれるブランドだと聞いています。
森岡:華美ではなく、女性を引き立てる。仕立てや素材にこだわる、ある意味、メンズライクなブランドと言えます。
小暮:それゆえアクリスは、「ディスクリート(=控え目な)ラグジュアリー」と呼ばれています。
森岡:女性のパーソナルスタイリングの仕事をしているときに、よく「着る服がない」という話を皆さんから聞きます。世の中に服はたくさんあるのですが、スーツを探しているときに、重さを感じる、年齢がある程度上に見える佇まいがしっかりして見える服を見つけるのがとても難しいという相談を受けるのです。
小暮:全体がカジュアル化していますから、女性用のキチンとした服ならばなおさらです。
森岡:最近では女性が上司の場合もあるでしょう。初めての会社に挨拶に行ったときに、スーツを着た女性の装いが軽く、上下関係の勘違いから男性から名刺交換をしてしまったと仰っている人がいました。女性の品格ある服を探すということはやはり難しいものです。
小暮:アクリスのHPなどをチェックすると、創業者はアリス・クリームラー=ショッホという女性です。2代目の妻でビジネスを発展させた人も女性だそうです。アクリスはある意味、女性を知り尽くしているブランドでしょうね。
森岡:過去にはパリの老舗クチュールメゾンとも提携していたそうです。
小暮:スイスと聞くと、男性は「時計」のイメージをもちますが、素材も有名です。シャツ生地の良質なものが多いですし、私が愛用しているアウトドアウェアのストレッチ生地も確かスイス生まれでした。いずれも高級生地として知られています。
森岡:スイスは水がきれいなので、機械だけでなく、生地メーカーも多いのでしょうね。スイスのそういったバックボーンもアクリスには根付いているのだと思います。