採用パンフレットを「求職者の疑問や先入観を払拭するツール」にするための考え方


採用パンフレットと採用ページの違い


最後に、この時代にわざわざ紙のパンフレットを使う意味について考えたい。求職者への情報提供が目的なのであれば、企業の採用ページ(Web)でも事足りると思う方も少なくないだろう。

採用ページと採用パンフレットの特徴を比較すると、それぞれの持つ強みが相互補完的になっていることが分かる。どちらのほうが良い、というよりも双方をうまく組み合わせることが重要だ。

採用ページと採用パンフレットの違い

情報収集の方法


一方で採用パンフレットは、求職者が意識的に自社の情報を探していなくても、相手の目の前に差し出すことができる。自社の認知がない場合や、現時点で求職者の候補に入っていない場合は、合同説明会などの場でパンフレットを配布するほうが有効だ。

インターネット上の採用ページは、検索や広告クリックなど、求職者の自発的な行動がないと訪れてもらえない。

伝えられる情報


採用ページには、掲載できるコンテンツ量に上限がない。会社の事業内容から最新ニュースまで、あらゆる情報にたどり着くことができる。対して採用パンフレットは、ページ数が決まっているため、掲載できるコンテンツに限りがある。

ただしWebの場合、ページ訪問者の行動はじっくり読む・見るというよりも、ざっと全体像を眺めるという表現のほうが近いという研究もある。その意味で、スマホやパソコンのスクリーンよりも、ページ数に限りのあるパンフレットのほうが的確に情報を伝えられるケースも十分考えられる。

ある程度集中した状態で自社の情報に触れてもらうために、紙のパンフレットは有効な手段の一つだ。

更新性


この点で比較すると、Webのほうがパンフレットよりも優れている。一方で、細かい更新のたびに求職者がページを訪れることはほとんど期待できないので、その点は予めふまえたうえでページを設計すると良いだろう。

また、パンフレットについても配布しきる前に情報の差し替えが必要になると、無駄が発生してしまう。そのため、制作時にはできる限り差し替えが発生しないような構成にすることも重要だ。

話題性


採用ページは、そのURLを共有することで拡散される。遠く離れた他人にも同じ情報を送ることができるため、シェアしやすい設計にしておくことで話題化しやすい側面がある。同じく就職先を検討する仲間同士であればWebのほうが情報を共有しやすいだろう。

一方で、求職者を落とす意味では、じつは採用パンフレットも効果的な役割を果たす。例えば求職者がエントリーを検討している会社のことを家族に話す場合。Webサイトよりも手に取れるパンフレットのほうが良いケースもある。

リマインド効果


合同説明会の場合、求職者は1日に多くの企業説明を聞くことになるため、彼らの記憶に自社がどれだけインパクトを残せるかは判断し難い。

Webページも同様に、ブラウザのタブを閉じると同時に情報も閉ざされる。「詳しくは採用ページを見てください」と就活生に伝えたところで、果たして本当に検索してそのページを訪れてくれる可能性はどれくらいあるだろうか。

一方で採用パンフレットは、手元にあるというだけで、リマインド効果を発揮する。家に帰ってバッグを開けた時や、書類の整理をする時など、文字通り“ふとした時に”意識に入り込むことができる。

まとめ


採用パンフレットは、求職者に対する認知を拡大し、求職者の疑問を払拭することでエントリーなどの行動へと導くための重要なツールだ。

採用ページとはメリットを補完し合える関係にあるため、どちらか一つではなく、どちらも活用することが望ましい。

また、効果的な採用パンフレットを作成するには、自社の伝えたいメッセージを盛り込みつつ、「求職者の目線に立つこと」が欠かせない。求職者が知りたいことに触れるのはもちろん、自社や業界に対して持たれているイメージをふまえ、それらを覆すためのメッセージを盛り込むことが、効果的なパンフレットを作成するための鍵だ。


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文=小野祐紀

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