採用パンフレットを「求職者の疑問や先入観を払拭するツール」にするための考え方


採用パンフレットの戦略的役割


ここからは、採用パンフレットをどのように活用すると効果的かを考えていきたい。 人が行動を起こすプロセスをモデル化すると、大まかに「認知→検討→行動」の3段階があるといわれている。

したがって、求職者に「この会社にエントリーしたい」という「行動」をとってもらうためには、まずは自社を「認知」してもらい、就職先として「検討」してもらわなければならない。

採用パンフレットが果たす役割。認知、理解、検討それぞれの段階でパンフレットが役に立つ。

採用パンフレットは、このプロセスのなかで、認知から検討の段階で活躍するツールとして期待できる。

【認知】自社の存在だけでなく、正しい姿を知ってもらう


採用パンフレットが第一に力を発揮するのは、自社のことを知らない人材へのアプローチだ。パンフレットを求職者に渡せる場面は、求人媒体が主催する合同説明会などのイベントだ。

もし仮に自社ブースでの説明を聞いてもらえずとも、パンフレットを一度手に取ってもらえば、自社を認知してもらうきっかけは掴めたことになる。その上で、手にとったパンフレットを開いてもらうためには、文字情報だけでなく、写真や印刷の工夫など、自社らしさを表現するあしらいも非常に重要だ。

また、先に紹介したような「求職者の疑問に答えられる情報」が適切に配置されていることがポイントになる。ここでの考え方としては、求職者は働いたことのない会社に対して「何も知らない」もしくは「何らかネガティブな先入観を持っている」という前提に立つとよいだろう。

この前提でパンフレットに載せる内容を検討すれば、パンフレットが「自社のことを知らない人」「業界や自社に対して抱くイメージのせいで、転職を検討していない人」にむけて自社の正しい姿を伝える役割を果たしてくれる。

特に後者については、当事者だけでなく、パンフレットの制作会社など第三者の目で自社のことを冷静に見つめてくれる存在が鍵になる。「外から見て自社がどのように映っているか」を知り、その上で「どのような情報があれば、イメージを覆せるか」を協力して考えることで、より効果的なメッセージを発信することができる。

【検討】事業やビジョンに親しみを持ってもらう


検討の段階では、求職者がより現実的に応募すべきか、そうでないかを判断する。

このときの判断軸は求職者により様々だが、基本的には「どんな会社なのか」「どんな人材を求めているのか」「入社したらどのように働けるか」の3つに紐づくと考えてよいだろう。

そのため採用パンフレットには、ある程度具体的な情報があると良いだろう。例えば重要度の高いと思われる給与も「弊社基準に順ずる」と書かれているよりも「35万円〜60万円/月、賞与年2回」の方が、求職者にとって検討しやすい。

ほかにも、ビジョンがサービス運営や社内文化とリンクしていることを示すことや、労働環境の良さを伝えることも有効だ。

【行動】複数社にエントリーした求職者に、自社ならではの魅力を伝える


検討のフェーズで自社に魅力を感じてもらえた場合は、エントリーへとつながる。ただし、求職者は複数社同時にエントリーする場合も珍しくないので、「自社で働く魅力」を伝えることが必要だ。

もちろん、実際に求職者と会う中で入社意欲を高めることが重要だが、採用パンフレットでも、待遇や労働環境などだけでは語れない魅力を伝えるページがあると、求職者の心に良い“引っかかり”を残すことができるかもしれない。

自社のブランディングを考えるヒントとして、下の記事も参考にしてほしい。
>>> 採用ブランディングの意義、メリットを再考する。「応募の質」を高めるために

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文=小野祐紀

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