【独白】紀里谷和明がコロナ禍で「新たな映像作品を作ろう」と思った理由

映画監督の紀里谷和明


『新世界』で描きたい、日本人の勇気ある物語


新型コロナウイルスの影響などもあり、いまこの時は、私たちの意識が改革される瞬間です。これまでの考え方、いわゆる既得権益というものが崩壊していくと信じているし、そうあってほしい。これは世界にも言えることですが、特に日本に必要なのが「勇気」だと思います。いま政治も変わりそうじゃないですか。その壊れかかっているものに対して、誰かが最後に崖から突き落とすような力が必要で、強大なものではないかもしれないけど、その力は確実に必要になります。
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そこを『新世界』の物語の中でも表現します。ここでは戦国時代の織田信長、豊臣秀吉、徳川家康が近未来に出てきます。あの世界も同じで、いろんな思いがあって、人々が殺しあっていたわけじゃないですか。誰もハッピーじゃないところをどうやって早く治めるのかって、みんながやっていたわけじゃないですか。それを、全部繋げて物語として表現します。

今回は映像ですが、映像だけではない分野でもやろうとしています。音楽、舞台にも波及していくし、マーチャンダイジングなど、多様な形で波及していきます。そう、デザインしていきます。

コロナウイルスの困難を、新しいシステム創造の機会に変えて。


私たちアーティストとは、そもそも人々が見たことないもの、聞いたことないもの、考えてもいなかったものを提供するのが役割です。現在、アーティストと呼ばれる人たちとエンターテイナーと呼ばれる人たちが存在するのですが、今はほとんどがエンターテイメントの世界。
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みんなが“今”楽しめるもの、“今”理解できるものを、提供しましょう。その作品が10年後、20年後どうなっているかは知りません。“今”楽しければ良いでしょう? というような作品を作るのがエンターテイナー。僕はそれを否定しません。それは必要だと思いますし、お客さん側からしても1800円払うのだから、楽しませろよというのが大半です。

しかし、以前は、1800円払って自分が知らない世界を知りたいというお客さんが沢山いた。それはアートの世界でなくても、ありとあらゆるビジネスがそうだと思います。『新世界』の中では、格差社会のことは描くし、これから訪れる可能性のある管理社会のことも描きます。それに対して、ちょっと臭い言い方をすると、「どうやって自分の魂を守るのか」ってことです。自分が大事にしていることを、どうやって守るのかを作品に込めたい。

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大きいことを言うようですが、結局はそこなんですよね。自分が大事なものをどうやって守るのか、ということ。自粛生活で家の中で閉じ込められて、コンテンツと呼ばれるエンターテイメントを消費して、何も内側に残らないけどケラケラ笑いながらウーバーイーツで出前を頼む。それで運ばれてきたものを食べて、インターネットをやって、それで何なのっていう。ブロイラーみたいじゃないですか。

悲しいことに日本は「失われた30年」と言われていて、失うものが大きかったんですよ、ただ、これからの日本人は失うものはないわけですから、勇気を持って自分がやりたいことをやりましょうよ、ということを僕は「新世界」を通して伝えていきたいですね。

構成=池田鉄平

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