危機が訪れた時、立ち止まるのか。それとも新たな事業を展開するのか。経営者には瞬時の判断が求められる。ひとつの決断が会社の未来を左右する。
そうした中、“新たな事業の創出”という大きな決断に踏み切ったのが、trevary代表取締役の金城辰一郎だ。trevaryはもともと、2016年にokinawa.ioという社名で沖縄県内の企業のウェブマーケティング支援を手がける会社としてスタートしたが、途中で事業をグルメvlogアプリ「trevary(トレバリ)」にピボットするタイミングで、社名を変更した。
サイバーエージェント・キャピタル、エフベンチャーズから資金調達し、新たな船出を切ったtrevaryだったが、グルメvlogアプリは観光事業に大きく頼る部分があった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の発令により、人の移動は大幅に減少。サービスにとっても、会社にとっても大きなピンチが訪れた。
そんなピンチをチャンスに変えるべく、trevaryはコロナ禍で新たにオンラインイベントを簡単に収益化できるサービス「amply(アンプリー)」をわずか1カ月で開発した。なぜ、新サービスを立ち上げることにしたのか。金城の怒涛の日々に迫った。
緊急事態宣言で状況は一変
「移動距離とアイデアは比例する」
尊敬するハイパーメディアクリエイターの高城剛氏の言葉の下に、人々の移動距離を増やしたいという思いを実現する地図と動画を掛け合わせたサービス。それがtrevaryだ。
動画で消費の意思決定をする機会は増えてきているが、これからは行き先も動画を見て決める時代になるのではないか。いずれは観光全般の動画を提供するというビジョンを持ちながら、まずはカフェという切り口からスタートした。
「お出かけ先の目的地選びの失敗」を解決する──せっかくの旅先で店舗が閉まっていたり、思っていた雰囲気と違っていたりという経験は誰しもあるだろう。
その課題を事前に解決するためにカフェの様子を動画で紹介。ユーザーのニーズに合わせて調整を繰り返し、運営しているインスタグラムでエンゲージしている15万人もの “ファン”を中心に展開していた。
だが移動と掛け合わせたサービスには致命的となる緊急事態宣言が状況をガラッと変えてしまった。利用者が通常の3分の1にまで落ち、SNSのビジネスモデルを築いていたサービスにとっては苦しい状況となってしまった。
さらには観光関連の会社からのプロモーション支援で見込んでいた売り上げも一瞬で消えてしまう。「コロナ特別貸付」という国の制度も利用しながら、スタートアップとしての生き残り策が始まる。
予定していた新機能開発もストップ。会社を残していくための資金繰りにも奔走。そして、流行の収束を待つのではなく、すぐに売り上げが見込めるサービス作りへと舵を切る決断をする。