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2020.07.30 06:30

米国で破産申請のMUJIがパンデミックに勝てなかった理由

Ron Adar / Shutterstock.com

Ron Adar / Shutterstock.com

日本のライフスタイルブランド無印良品を展開する良品計画の米国子会社、MUJI USAが先ごろ、連邦破産法第11条の適用を申請した。これにより、同社は老舗紳士服ブランドのブルックスブラザーズなどと同様、新型コロナウイルスのパンデミックで”犠牲”となった米小売業およそ110社のリストに名前を並べたことになる。

MUJI USAの負債総額は6400万ドル(約68億円)。米国内の19店舗はパンデミックの影響で3月中旬以降、一時閉鎖していた。その後、店舗の一部は営業を再開したものの、依然として高額のコストがかさむ状況は変わらず、事業の継続は引き続き困難になっていた。

ただ、同社はパンデミックの発生前から、ニューヨークのタイムズスクエアやフィフスアベニューなど一等地にある店舗の高すぎる賃料の支払いに苦労していた。賃料については引き下げを求めて再交渉していたものの、合意には至らなかったという。

無印良品が米国市場に参入したのは2007年だが、それ以来、輸入通関手続きなどの問題で物流に障害が発生するなど、事業運営は容易ではなかった。さらに、生産拠点が米国から離れていることによるコストの負担も大きく、販売価格や品揃えに悪影響が及んでいた。

一方、良品計画が7月10日に発表した今年第1四半期(3~5月)の連結決算では、売上高は前年比およそ30%減の787億円、最終損益は41億円の赤字だった。

米国市場では歓迎されず?


ムダを省いた実質本位、ノーブランドの理念で知られる無印良品(MUJI)は、その方針が時代の意識に合ったことで成功を収めてきた。だが、米国市場での転落を招いたのもまた、まさにそのブランド哲学と反アメリカ的な反大量消費主義的アプローチだった。

MUJIが高品質であることや必要なものを購入するという持続可能性を重視した考え方を持つ一方で、米国人は大量に購入し、機能よりも見た目の美しさを重視する。米国市場では、国産の類似の製品より販売価格が高くなることも問題となっていた。

無印良品の業績悪化は、米国市場に限らず需要を正確に予測できていなかったことが原因だ。そのため衣料品などの季節商品を中心に、大量の余剰在庫の問題を解決することができなかった。それにもかかわらず、粗利益率を管理することを重視。品質の維持やブランディングの観点からも、売れ残り商品の値下げ販売に消極的だった。

今後の計画は─


世界的な混乱が続くなかでも、良品計画グループは世界的な店舗ネットワークの拡大を計画しており、来年8月までには(米国を含めて)現在970店舗あるMUJIを、合計1138店舗に増やす予定。

良品計画の売上高はその60%が日本国内の事業によるものだが、成熟した自国市場以外での事業拡大を積極的に推進する方針だ。海外店舗のおよそ半数が集中する中国市場を重視しており、北京で無印良品の思想を体現した「MUJI HOTEL」を開業したほか、大手ECサイトJD.com(京東商城)の本社内に初のコンビニエンス・ストアをオープンするなど、革新的なフォーマットを展開している。

また、日本では新型コロナウイルスのパンデミックの影響で在宅勤務が拡大するなか、新たなビジネスとして家具のサブスクリプション・サービスを開始している。

編集=木内涼子

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