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「21世紀サステナビリティ経営の極意」


もう1つは、将来の規制リスクへの対応だ。

すでにEUでは、廃棄物の量を極限まで減らし、廃品を資源化していく「サーキュラーエコノミー(循環経済)」が主要政策の柱の1つとなっており、パソコンやスマートフォン、AirPodsなどのイヤホン製品にまで、リサイクルの義務が課されている。

さらには、消費者が製品の修理をメーカーに要求することができる「修理権」という概念を実現しようとまでしている。

これが制定されると、「これは、もう、買い替えですね」といった対応がメーカーには許されず、修理できるようにする「義務」が生まれる。このとき、修理に工数がかかればコスト増になってしまうため、アップルはいち早く修理ができるようにしたうえで、取り替えた製品をまた資源化できるようにしているのだ。

再生素材の使用は、これまで「性能が劣化する」と言われて忌避されてきた。だが、もし再生素材しか活用できなくなったとしたら、再生素材の性能を高める技術・能力を持つメーカーに軍配が上がることは容易に想像がつく。「再生素材なんてコストが割高で質が低い」という感覚だけを続けていたら、そのうち高い質の製品が作れなくなったり、そもそも素材が調達できなくなるリスクさえある。

日本では、2001年にテレビ・エアコン・冷蔵庫・洗濯機の家電リサイクルが、2003年にパソコンのリサイクルが、メーカーの義務として制定された。しかし、その後17年間、リサイクルは規制面で停滞しており、メーカー側の努力がなされてこなかった。

2013年には、その他の品目でも小型家電リサイクル法が制定されたが、中国からの輸入依存度低減を意識したレアメタル回収が目的となっており、リサイクル技術の開発はほとんど進んでいない。そのため、アップルと同じことをしようとしてもできない状況にあり、前述した「そんなことは不可能だ」という反応になる。

今後世界の市場環境は、アップルが目標とした2030年に向け、全くの異次元に突入していく。

「従来の不可能を可能にしなければそもそも事業活動ができなくなる」──。

これほどまでの切迫感が、アップルだけでなく、多くのグローバル企業には共有されてきている。

その背景には、異常気象や新型コロナウイルスの問題により浮き彫りになってきた大きな地球の変化がある。私たちはいま、「前提」としてきたものを大きく捨て去らなければいけない局面にきている。


さらに詳しい内容を知りたい方は、私の近刊『データでわかる 2030年 地球のすがた』(日本経済新聞出版)に一度目を通してみていただきたい。

連載:「21世紀サステナビリティ経営の極意」
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文=夫馬賢治

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