また、ウイングストップの市場シェア・ポジションが魅力的だということもある。チキンウイングに焦点を絞ったウイングストップは、競争とはほぼ無縁の状態にあるのだ。ドミノ・ピザは、その市場シェアの一部を欲しがっている可能性がある。それも当然ではないだろうか? 5月に発表されたウイングストップの第1四半期の既存店売上は10%近く増加していた。この業界が経験したことのないような危機のさなかでは、きわめてまれなサクセスストーリーだ。
ドミノ・ピザが改善の必要性を認めるのは、今回が初めてというわけではない。2009年に実施したキャンペーンでは、残酷なまでに正直な客たちのフィードバックを受け入れて、クラストからソースまでのピザレシピを全面的に見直した。このキャンペーン以降、ドミノ・ピザの米国での既存店売上高は37四半期連続でプラス成長を記録している。同時期の株主利益率は2000%以上増加した。
今回のチキンウイングの改良は、2009年にピザを改良したときと同様の動きだ。アリソンCEOはこう述べる。「継続的なメニュー革新とは必ずしも、まったく新しいものである必要はない。顧客から改良を求める声が寄せられている既存商品の大々的な刷新でも良いのだ」
ピザを改良したときと同じように、今回も成功するのだろうか? それは、時が経てばわかるだろう。だが、複数のアナリストが、その可能性を好意的に評価している。
チキンウイング戦争勃発の可能性はさておき、ウイングストップとドミノ・ピザのあいだでは、デジタル注文全般をめぐる「胃袋シェア」競争が続くだろう。当面のあいだ、顧客たちは「簡単」と「便利」を優先するはずだ。そしてどちらのブランドも、そのニーズに十分に応えられる。
もうひとつの注目すべき重要ポイントは、ドミノ・ピザがチキンウイングの改良に注力するいっぽうで、従来のピザ分野の競争相手からも目を離していないことだ。
アリソンCEOは、「米国の顧客から得られる利益を増やし続ける大きなチャンスがある」と述べる。「今晩全米で食べられるはずのファストフード・ピザのうち、当社が提供しているのは、まだ5枚に1枚ほどにすぎない。当社のシェアは、多くの国際市場で大きく拡大しており、それが当社にとって大きな自信になっている」