僕たちはチル期。「ポジティブ」を見ていたい若者たちに刺さる22歳映像作家の挑戦


誰かの心に寄り添うことを自ら探究し続ける小西は、撮影させてもらう人たちだけでなく、完成した作品を見る人たちにも常に思いを馳せている。そして、取材先で触れる、それまで知らなかった世界や新しい価値観をどんどん吸収して、彼自身も日に日にアップデートされていく。


Photo by kony

「在日香港人の若者が新宿で街頭演説をしてた時に『日本の若者は選挙権があるのに選挙に行かない。うらやましい』って片言の日本語で言われてぐさっと来たんですよ。自分は恥ずかしながらその時選挙に行ってなかったんで、すごく考えさせられて。選挙も行かなきゃダメだなって、こういう感覚も含めて若者に届けたいって思いました」


無関心な人にこそ届けたい。これからのドキュメンタリー


作ったドキュメンタリー映像がシェアされて、より多くの人に見てもらうことこそが、撮らせてくれた人たちへの1番の恩返しだと小西は語る。

「ドキュメンタリーのテーマって、そもそも視聴者の好みに合わせてるわけでは全くないから、ただ作るだけじゃ見られない。作るからには、それをどこで発信して、どうやってたくさんの人に届けるかというところにまで責任を持たなきゃいけないと感じてます」


Photo by 立石裕太

いかにして若者に見てもらうかに心を砕く小西は、撮影の様子やロケ先の日常風景などもSNSを使って巧みに発信している。

「これからは『誰が撮ったか』も付加価値になる時代。作ったのはどんな人で、その道中でどんなことを考えたのか。そういう背景も全部出していくことで、感情移入しやすくなったり、別の楽しみ方だってあるかもしれない。YouTubeに馴染んでる若い世代にとっては特に、興味を持ってもらえる入り口が広がるんじゃないかなと思うんです。その先に、社会や政治のことを考えたり、社会課題を解決しようとすることは『かっこいい』って思ってもらえるようなロールモデルを作りたい。そこに僕はこれからも挑戦し続けていきたいと思ってます」


Photo by 綿谷達人

若者たちが初めて社会課題と向き合い、アクションを起こすきっかけを増やしていく。その先に小西が描くのは、アーティストやアスリートへの憧れのように、社会課題にアクションを起こすことを「かっこいい」と思える世界。もしそれが実現したら、一人の力ではどうにもできなかった問題も、世界中の多くの人と一緒に「せーの」で解決することができるかもしれない。

モロッコ出身の友人から渡されたバトンを、映像を通してよりたくさんの人に届け、行動する人たちの姿が連鎖して少しずつ世界を変えていく。そんな力がドキュメンタリーにはきっとある。

連載:小さな声から見えてくる、ノンフィクションな話
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文=水嶋奈津子

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