僕たちはチル期。「ポジティブ」を見ていたい若者たちに刺さる22歳映像作家の挑戦



血の繋がりのない親子が教えてくれた、色々な愛の形


次に小西がカメラを向けたのは、フィリピン・マニラのスラム街で暮らす、5歳のストリートチルドレン、アンジェロを育てる44歳のホームレスの女性だった。フェンスに手を縛られ、泣き続ける子どもの様子は一見すると虐待にも見えかねないが、見方を変えれば、障害を持つ子どもが危ない目に合わないようにという女性の精一杯の優しさだった。血の繋がりはなくても、確かにそこには愛があり、彼らなりに愛を表現する姿を追った。


Photo by kony

「『色々な愛の形を若者たちに見せたい』。それが僕の芯なんだってこの作品を通して気づかされました。手を縛るとか泣き喚くとか怒鳴るとか、僕たちからしたら異常に感じることでも、彼らにとってはそれもひとつの愛で、愛はきれいなものだけじゃない。いろんな愛の形が彼らには全部詰まってた。受け取る側さえそれを愛だと認識したら、それは全て愛になるっていう真理を感じたんです」

アンジェロの実母はセックスワーカーで、仕事のためにドラッグを常用していたために刑務所に入れられてから、3年の月日が経っていた。カトリック信者が83%を占めるフィリピンでは、中絶は犯罪とされており、フィリピンに来る観光客との間に生まれた子どもの5人に3人が貧困に喘いでいると言われている。そんな社会背景を伏線として描きながらも、完成した作品は二人の愛を中心に構成されていた。


本編は「Yahoo!JAPANクリエイターズプログラム」で公開→https://creators.yahoo.co.jp/konishiyuma/0200037377
『#JUST LOVE』(監督:小西遊馬)「Asians On Film Festival of Shorts」でBEST DOCUMENTARY賞を受賞したほか、国内外5つの映画祭でオフィシャルセレクションにも選ばれた。

「誰かを批判したり、否定したりするようなことをメインにしたくない。誰かを本気で愛するとか、他者のために身を削るとか、自分自身を愛するとか、そういう愛が発生する瞬間をずっと探してるんです。それが1番美しいから。そういうものなら若者も見てくれるんじゃないかって思ったんです」
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文=水嶋奈津子

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