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更に新型コロナウイルスによって、業界としてのIT化は更に加速した。建築会社や住宅会社の商談も今はオンラインへとシフトしている。だが、施工現場は、人が実際に集まって作業するため完全なオンライン化は難しい。

また、現場には高齢者が多いことからケアが十分に必要となる。3密回避を意識しすぎると作業が止まってしまう恐れもあるが、現場で働く職人は個人事業主が多く、現場がストップしてしまうと、仕事が得られない可能性もある。作業が進まない、職人も仕事ができない、誰も喜ばない状況となってしまう。

職人の仕事と生活を守るためにも、ITを活用し、現場で働く人をできる限り少なくし密を減らしつつも、工事現場を止めないことが求められる。

建築会社の「施工」は、プロセスの1フェーズに過ぎない。だがそのフェーズが最も複雑で、人の手間暇が必要で、IT化しにくいところでもある。それは自社だけで完結できる部分ではなく、人とモノが流動し続ける環境下にあるからだ。一番困難な部分をIT化するところから始めたことで、その先のサービス展開の立体感が見えてきたと、稲田はいう。

アンドパッドが更なる資金調達で目指すのは、現場のIT化だけではなく業界全体の生産性向上にも貢献することだ。業務の流れ、お金の流れ、物の流れ、それらをテクノロジーで繋げていくことである。稲田は「建築はそもそも地場産業。地元に根づき、良い施工力とサービスをもち、職人さんと関係性を深める会社が持続的に事業運営される。そんなお客様の住宅経営が成り立つために、良いITを提供したい」という思いを持つ。

IT投資が困難な会社にサービスを提供していくことで経営管理も一括して支援する。さらにはデジタルシフトを目指す大手に対しても、これまで溜めてきたナレッジでソリューションを提供していく。人とモノとお金の流れをどれだけデジタル空間へ持っていけるか。アンドパッドが提供するサービス群で、少しでも現場の負担を減らしていくことが業界全体にとってもプラスとなるはずだ。

業界内部の変革者に寄り添うITとして業界全体に幸せを


建築業界の生産性を上げていくことは、業界内外の要請であり、現場では日々デジタル化の試行錯誤段階にある。アンドパッドをはじめ、様々なテクノロジーが業界に実装されていくのだろう。

「建築現場にとって必要不可欠なサービスとなり、“アンドパッドがあったから、うちの会社はデジタル化に踏み切れた”と言ってもらえるサービスになれれば嬉しい」と稲田はいう。

そのためには長く険しい道に挑むリーダーシップが求められる。アンドパッドが目指すのは、様々なサービスと連動することで、デジタルで繋がるオープンプラットフォームだ。あらゆる情報やアクセスが集い、人がやる必要のない業務をIT化することで人手不足を解消する。

その先には、デジタル化が進行しても、日本の建築産業の作り手の思いこそが大切という思いがある。アンドパッドが描くのは、人が持つ創意工夫を発揮する現場があり続ける世界。「幸せを築く人を、幸せに」という理念である。省人化が進行した建築業界の未来に、人の思いと、作り手の技術は、どんな形で残っていくのだろうか。

文=新川諒 人物写真=小田駿一

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